『鬼滅の刃』メガブレイクの秘密は?
いまやブームを通り越して社会現象となった『鬼滅の刃』(著・吾峠呼世晴/集英社)ですが、なぜ大人から子どもまでここまで夢中になれるのでしょうか?
鬼滅の刃はキャラクターもストーリーもしっかり作りこまれており、ブレイクすべくしてブレイクした作品といえます。
そして女性読者にとって本作のアバターは、主人公・竈門炭治郎の妹である禰豆子(ねずこ)になると思います。禰豆子の実年齢は10代前半ですが、体型を大人から子どもまで自在に変化させることができます。これにより彼女ひとりで、子どもから大人まで幅広い読者のアバターとして機能しうるのです。
見た目は幼児でありながら、実は18歳のピノコ(ブラックジャック)に似たエイジレスなキャラ設定ですね。
原作者の吾峠呼世晴氏は、アバター理論を熟知したうえで禰豆子を生み出したと考えられます。当然、そのほかの主要キャラもしっかり練りこまれています。
大人も夢中になってしまう理由は?
とくにわかりやすいのは善逸と伊之助です。善逸は普段はヘタレですが、危機に直面すると別人のような強さを発揮します。伊之助は普段は猪を被っていますが、素顔は超イケメンです。
ギャップが魅力になるのは恋愛でもマンガでも同じですが、鬼滅の刃もやはりこの基本に忠実だったのです。
ストーリーも、「ヒロイン(禰豆子)を救うため、少年が老師の下で修業を積んで強くなり、悪の組織と戦う」という少年マンガの王道パターン。なおかつ鬼滅の刃では、人間を食い殺す鬼たちも単純な悪には描かれていません。
すべての鬼たちは、元をただせばラスボス・鬼舞辻無惨によって強制的に鬼化された人間であり、彼ら自身が「犠牲者」でもあります。
したがって鬼殺隊がようやく鬼を倒しても、爽快感というよりもの悲しさが残ります。あえてそのように描かれているのです。
そもそも物語は、炭治郎の家族が鬼によって惨殺されるシーンからスタートします。すべての鬼を抹殺しリベンジを果たしたとしても、家族が生き返ることはありません。
バトルマンガでありながら、同時に暴力の限界・虚しさが描かれていることも、大人が 鬼滅に夢中になってしまう理由なのでしょう。
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