ケース2.「家内を帰らせたから、もう大丈夫だよ」
「コロナでわかったのは、今回は遊びじゃなく本気だということ。仕事人間の主人が途中で放り出すなんて、よほど好きなんでしょう?主人に捨てられる前に、こっちから離婚してやろうって思っています」
吹っ切れた様子で口にするのは2人目の相談者・Hさん(38歳)。少しやつれた様子で事務所へ相談しに来たのは3月上旬。
夫(47歳)は10年来、クリニックの雇われ院長として汗を流し、ようやく念願だった海外長期研修を実現。最先端の医療を学ぶべく現職を辞し、2年間(2020年7月帰国)の予定でドイツへ渡ったそう。
Hさんは長女の小学校(私立)を変えたくないという理由で帯同せず、単身赴任という道を選んだのです。私が「研修中だと収入が少ないのでは?」と尋ねると、やはり雀の涙程度。Hさんは「主人は生活費を送ってこないので私の独身時代の貯金を使い、底が尽きました」といいつつ、健気に夫の帰りを待ち続けたのです。
海を隔てた夫婦が巻き込まれたのが、今回のコロナ渦。夫から連絡がなく、心配するHさんは2月中旬、病院に確認。当時ドイツは影響が少なかったため、予定通り研修を行えるとのことでした。
ようやく夫から一報が届いたのは、2月下旬。「3月には日本に戻る」というのですが、Hさんは首をかしげました。
夫は家庭を顧みない仕事人間。医院長時代はクリニックの隣にワンルームを借り、自宅に戻るのは週末だけ。平日はワンルームに寝泊まりするほど仕事に打ち込んでいました。どの国も他国からの入国を制限しているため、夫が再度、ドイツへ戻ることは難しい状況。
「あの人が念願の研修を切り上げるなんて…」
夫はさらに「落ち着くまで実家に帰ってくれ」と続けたのですが、帰国者は2週間の隔離が必要です。Hさんは「夫が2週間家に戻ってこなければいいのに」と思いつつも、「喘息持ちの私を心配して」と解釈し、素直に実家へ帰ったそう。
そんな矢先、Hさんのスマホに「家内を帰らせたから、もう大丈夫だよ」と意味深なLINEが届いたのです。Hさんは「もしかすると不倫相手に送るLINEを間違えて送ったの?」と女の勘が働いたそう。
私は「防犯カメラに何かが映っているのでは?」と助言し、Hさんは夫の不在を見計い、自宅の防犯カメラからSDカードを抜き取ったのです。
データを再生すると夕方に入り、翌朝に出る女性の姿が…しかもHさんの大学の後輩らしき風貌。共通の知人と逢瀬を重ねるなんて特に悪質ですが、女性を自宅に招き入れるためにHさんを追い出したことが明らかになったのです。
Hさんいわく、夫の不倫は初めてではありません。院長時代にワンルームへ女性を連れ込んでいたことも、うすうす勘づいていました。でも、仕事は熱心だから黙認してきたのです。しかし今回の夫は、女性と会いたい一心で研修を途中で放り出した格好。明らかに本気です。
独身時は大学病院で働いていたHさん。「俺を支えてくれ」という夫のためにキャリアを捨て、家庭に入り、家族第一で尽くしてきました。
夕食のおかずは5品以上用意したり、洗濯かごは常に空の状態にしたり、台所のシンクを毎日ピカピカに磨いたり…亭主関白の夫が要求する家事の数々を必死でこなしてきたのですが、もう我慢の限界でした。
Hさんは「時間の問題なら、こっちから離婚っていってやりますよ!」と息巻きます。私は「いまならコロナだからといえば、自宅に戻らなくても怪しまれませんよ。コロナを隠れみのにすれば、旦那さんに悟られず離活(離婚活動)に励むことが可能です」とアドバイスしました。
Hさんは医師免許を持っており、独身時の年収は900万円。仕事に復帰すれば経済的に不安はありません。
しかし、コロナの影響で長女の小学校は現在休校中。高齢の両親に任せるのは不安だし、学童では勉強の質が下がるので、Hさんが教えていました。コロナが収束し、病院への就職が決まり次第、離婚を切り出すつもりだそうです。