ケース3.「お前が待っていると思うと仕事に集中できない」
「夫とやり直そうという気持ちも多少、持っていました。しかし、夫は何も変わっていない…それが今回のコロナでわかったことです。離婚することに決めました」。
覚悟を決めた様子で言葉を絞り出すのは3人目の相談者・Kさん(42歳)。Kさんは母を連れ立って、事務所へ相談しに来ました。
夫(40歳)は消防士で帰宅が夜中になる過酷な職業。結婚当初、Kさんはあたたかい食事と風呂を用意するため、どんなに遅くとも起きていたのですが、夫の反応は感謝ではなく激怒でした。
「余計なお世話だ。お前が待っていると思うと仕事に集中できないじゃないか!」と吐き捨てたのですが、夫の自己中な性格は長男(現在11歳)が産まれても変わらず。
夫が家庭を見向きもしないので、家事や育児を一手に背負うKさんに向かった「俺は頼んだ覚えはない。家のことはお前が勝手にやってるんだろ!」と逆上する始末です。
さらに「お前の気が強すぎるから、いままで何もできなかったんだ!」と攻撃する有様。さすがのKさんも我慢の限界に達し、「少し頭を整理させてください」とLINEを送理、長男を連れて実家へ戻ったのは昨年末。
私は「旦那さんは公務員で収入も安定しているし、少し様子を見たほうがいいのでは?」とKさんに話しました。今回の別居は、必ずしも離婚前提ではなかったのです。
夫婦が別居している最中、発生したのがコロナ騒ぎでした。2月下旬、夫が突然実家を訪ね、インターフォン越しに訴えてきました。「コロナについて、昨日も1日中スマホで調べてた。気持ち悪くなっちゃって寝込んだよ。まぁ、いろいろ大変だろ?買えるだけ買ってきたから!」と。
夫が手にしているのはカップラーメン(24個入りの段ボール)、トイレットペーパー(1箱24ロール×3袋)、そしてマスク(10個入り×3袋)。大量の品は自宅の常備ではないので、夫がドラックストアなどで買い占めたのは明らかでした。
「ありがとう。でも受け取れないわ」それがKさんの第一声でした。「たくさんほしいのは誰だっていっしょ。でも我慢しているの。なぜなのかわかる?」と夫を諭したのですが、「俺だけじゃないだろ!みんな並んでいたぞ?」と相変わらずの悪態。
「なるべく人に合わないように心がけているのに、あなたは何なの?いまも救急車に乗っているでしょ!?」ほかの職業と比べ、感染リスクが高い夫が妻子と濃厚接触しに来たこと。それは妻子の心配より、自分の希望を優先した結果でした。
あわよくば気を引き、連れ戻し、いっしょに暮らしたい。そんな夫の下心をKさんは見透かしてたので、そう断罪したのです。夫は「バレたか」という感じで何もいわず荷物を持ち帰り、立ち去りました。
Kさんは「私は親から、自分さえよければいいという考えかたはいけないと教わりました。でも、旦那は違うみたいです。旦那といると息子まで自己中な人間になりそうで怖いんです!」と話します。そして3月下旬、Kさんが家庭裁判所から調停の申立書を取り寄せたまでが、私が把握している状況です。
今回の3人は辛うじて細い糸でつながっていた夫婦。しかし、コロナによって最後の糸を断ち切られた恰好です。例年通りなら、致命的な傷を負わず、無理に離婚せず、のらりくらりと結婚生活を続けていたのでは…そう思うと、やはり「コロナ離婚」は存在するのです。
今回の事例を下地に、コロナ離婚のチェックリストを作成しました。決して他人事ではないので、ぜひ参考にしてみてくださいね。