きょうは、「浮気をやめられない」という男女のご相談事例をもとに、その原因と改善方法についてお話ししましょう。
自身のことはもちろん、「パートナーの浮気に悩んでいる」というかたも、きっと参考にしていただけると思います。
ケース1.傷だらけのヒーロー症候群

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心理学的に見た人間のタイプのひとつに、「傷だらけのヒーロー症候群」とよばれるものがあります。このタイプの人の多くは、「自分が助けることができなかっただれか」がいたという幼児体験をもっています。そして、そのときの心の痛みをなんとか埋めるために、補償行為として人を助ける仕事に就いたりする人は少なくありません。
小さいころ、お母さんが病弱で、そのお母さんを「僕が助ける」と、お医者さんを目指すというようなケースもそのひとつですね。先日ご相談にお見えになった彼の場合、小さいころ助けたかったのはお父さんの妹、彼にとってはおばさんにあたる女性でした。
おばさんは彼の家族と同居していたのですが、ひきこもり気味でずっと家から出ないような暮らしをしていたとのことです。両親は共働きだったので、彼はこのおばさんとなかよしで、よく面倒をみてもらいました。
おばさんにとっても甥っ子である彼は大切な存在で、まるで自分の子どもであるかのようにかわいがってくれたようです。ただ、仕事もせず、パートナーもおらず、おばさんは遠慮しながら、兄の家族の世話になっていました。それを感じていた彼は、子ども心にも、そのおばさんの淋しさをなんとか満たしてあげたいといつも思っていたわけです。
繰り返される「救済行動」
やがて彼は成長し、結婚して幸せな家庭を築きました。しかしあるとき、転勤した先におばさんを思い出すような女性がいたのです。彼女は未婚で、どちらかというとサエない女性で、職場の人はあまり彼女に話しかけたり、なかよくしようとしたりすることがありませんでした。
ひとりでの夕食は淋しかろうと彼はその女性を食事に誘い、そうしているうちに深い関係になってしまったのです。そしてその後、彼のそのパターンは次から次へと発揮され、浮気を繰り返すこととなりました。
彼いわく、「だって、ほうってはおけないじゃないか」。それはまるで、捨てられた子犬や子猫を家に連れて帰る少年のような感じでもありました。そんな彼に、私は聞きました。
「しばらくおつきあいをして、その女性の淋しい心を満たしてあげると、もっと傷ついた女性が目につくようになったりしませんか?」「そうなんですよ」
もっと傷ついた女性を見ると、彼はこうなるわけです。
「きみは半年ほど僕に愛してもらったけど、あの女性はだれにも愛してもらったことがないんだよ。きみより不幸なんだ。だから、僕は彼女のもとに行く。ゴメンね」と。
つまり、彼のこれまでを振り返ってみれば、「女性を淋しさから救い出したい」と思っていたにもかかわらず、女性とつきあってはふるということを繰り返し、その女性は傷ついたり、男性不信を強化したりしていたわけです。彼は女性を助けるどころか、「傷つける人」となっていたわけです。
その彼の心の奥を探ってみると、「自分はどの女性も救えず、結果的にいつも女性を傷つけてしまう毒のような存在だ」という自己概念があることがわかりました。
彼が「浮気グセ」から解放されたワケ
そのまた深層心理を探っていくと、子ども時代のこんな思い出が出てきました。夕方になると、おかあさんが「ごめんね、遅くなって。淋しい思いをさせたわね」と帰ってきます。
すると彼は楽しく遊んでもらっていたおばさんから離れ、お母さんのもとに帰っていかなければなりません。
彼は、そのときのおばさんの淋しそうな表情や、お母さんに遠慮している姿をいつも見ていました。そしてお母さんといるときはおばさんのことばかりを考え、お母さんにウソをついているような気持ちになりました。
一方、おばさんといっしょにいるときは、お母さんに申しわけないような思いをもっていたのです。そんな話をしていくなかで、彼はその感情が、浮気をしているときに妻と愛人との狭間で感じているものとまったくいっしょだということに気づきました。
彼は心のどこかで、おばさんは一生結婚することがないだろうと思っていました。実際はそんなことはなく、おばさんが結婚を決めたときは、ものすごく傷ついたことを思い出したのです。
このご相談のあと、彼はものすごく久しぶりでおばさんと会いました。そしてその家族を祝福することで、心のなかにあった長年のわだかまりが溶けたかのような気持ちになることができました。
それによって、ネガティブな浮気のワナからも解放されていくことができたのです。