彼氏の浮気と、友人の復讐

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大昔の話になりますが、私の友人K(女性)には長年付き合っていた彼氏がいました。誰もが知るお似合いカップルで、結婚も秒読み。ところが、私はKの彼の浮気現場を目撃してしまったのです。
地方で若者の集まる繁華街は狭かったせいもあり、しばらくすると私以外のKを知る友人たちも、Kの彼氏と別の女性の逢瀬目撃情報が出るように…。このままではKの耳に入るのは時間の問題だと思い、私はKに見たままのことを報告することにしました。
ところが、Kは驚きませんでした。とっくの昔に気づいていたというのです。それを知ったとき、「許せない」という怒りの涙が出てきたとのこと。それなのに、Kは彼と別れることを望まなかった。彼に裏切られ、周りからも憐れまれても…。
私は、てっきりKは大きな器で彼の起こした不義を許したんだと思い、「まるで仏」だと思いました。人は間違いを起こすもの。失敗はだれにでもある。こういう大きな思想でもって、彼を許した彼女を尊敬すらしたのですが…違っていた。
Kはこういったのです。「彼を追い込んで別れることは、あまりにも彼にとって都合がよすぎる」と、「むしろ彼と別れることは、彼の苦しみを軽くする」と。
つまり、許したのではなかった。彼の浮気のことを知っていながら、それを責めず、知らない振りをして逆に彼に尽くすことで、彼の罪悪感を重くする。そのために絶対に別れないといったのです。
Kの彼にとっては、火遊び程度の女。Kと別れたくないからこそ浮気を隠しているのだから、彼を追い詰め、Kのほうから別れを切り出すことが、彼にとって「楽」であるというのです。
それよりも、彼の罪悪感、良心の呵責によって、もっと彼が苦しむ姿を見ていたいといいます。このとき私は、初めて「人のあざとさ」を思い知りました。何十年も前の話です。
それから数年でKと彼は別れることになったのですが、そのきっかけはKの結婚によるものでした。つまり、KはKで結婚相手に彼を選ばなかったのです。
Kははっきりと「結婚は経済力で選ぶもの」といいました。Kもまた、結婚相手候補と不義を重ねていたという事実は、後になって知ったのですが…。