行動すれば何かが変わるのかな、でも楽しくない
「先輩!今夜って1時間くらい空いてたりします?」
後輩が声をかけてきたのは、それから1週間ほど後のことだった。
「今夜オンライン合コンしようねって話になってたんですけど、女の子がひとり来れなくなっちゃって」
「オンライン合コン?なに、それ」
「Zoom使って、テレビ通話で合コンするんです!結構盛り上がるんですよ〜!先輩と同い年の男性も来るみたいなんで、よかったらどうですか?」
少し考えてからOKを出した。最初は断ろうと思っていたが、母の悲そうな声が頭に駆け巡ったのだ。両親を不安がらせているいまの私って、どうなの?少しでも行動して、結婚につながる出会いみたいなものを探したほうがいいのかもしれない。それで出会いが本当にないなら仕方ないって割り切れられるし。
やっぱり周りにも置いていかれたくない。仕事は続けたいけれど、置いてけぼりにされるのもイヤ。行動しないから変わらないだけで、行動したら結婚への意識も変わるかもしれないよね?
「じゃあ今夜、よろしくお願いしますね!」
そうして始まったオンライン合コンだったが、正直なにも楽しくなかった。恋愛に真剣な参加者たちは、みんな笑顔で話を続けている。
彼らは本気で恋がしたいんだな…そう思って一歩身を引く私に、気を遣って話を振ってくれる後輩。その優しさはひしひしと伝わってくる。
場を盛り下げたくないから一生懸命笑ってみるけれど…別にいま、私は恋愛したいって思えない。こうやって焦って恋愛しようとして、いいことはあるんだろうか。
「突然すみません、気になったんで個人的にメッセージ送っちゃいました」
オンライン合コン中、参加していた男性の一人から個別のメッセージが送られてきた。
「迷惑でしたかね」
「いえいえ、そんなことないです。ありがとうございます」
「それならいいんですけど…。さやかさん、乗り気じゃなさそうな顔してるんで」
驚いた。心の声がだだ漏れだったのかと思った。