栄子、29歳。独身で彼氏もいない。結婚って自然にできるものだと思っていたけれど、現実はなかなか難しい。
気づけば周りはみんな既婚者ばっかり。出会いってどこで探せばいいんだろう。これは、30代を目前にした私と、マッチングアプリで出会った4人の男性との初デートの話。
私がウェディングドレスを着れる日って、いつ?

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幸せなふたりの門出を祝福するかのように、その日は雲ひとつない晴天だった。太陽に照らされたウェディングドレスがキラキラと輝き、新婦の肌をより一層美しく彩っている。大好きな友人のハレの日に、本人以上に感動しっぱなしの私。親族もドン引きの泣きっぷりである。
「私も着たいなあ、ウェディングドレス。結婚したーい!」
「人の結婚式みると憧れちゃうよね」
隣にいた友人が声をかけてくれた。ふと席を見渡すと、周りの同級生たちはみんな結婚をしている。
会社員になる前はもっと合コンとかいっぱいあって、バーでステキな人に出会ったり、営業先の人に一目惚れされたり…そんなシチュエーションがあると思ってたのに。何にもないまま、私は29歳になった。
「みんないい人いない?私に紹介してよ」
「紹介できる人がいればもっと早くいってるよ!周りも既婚者だらけだからさぁ…」
「そうそう、だいたいみんな彼女いるもんね」
そっかぁ、と悲しいため息が漏れる。もしかして私、このまま結婚できないんじゃない?ウェディングドレスを着れる日なんてやってこないのかもしれない。
「あ、栄子あれやってみたら?マッチングアプリ!私の先輩、アプリで知り合って先月結婚したよ」
「うーん…私にとってアプリは最終手段なんだよね。自然な出会いを探したいっていうか…」
まだそんなに焦って出会いを探してるわけじゃないし、運命の出会いがあるかもしれないし。マッチングアプリで出会いを探すなんて、いまの私にはまだ早いと思うの。なんとなく、プライドがあるのよね。
二次会でいい感じにほろ酔いになった私は、駅に向かってひとりで歩いていた。
「あれ?栄子じゃん」
ふと声をかけられて振り向くと、大学時代の元彼が立っていた。
「久しぶり!元気そうだね」
「う、うん。そっちこそ変わんないね」
変わらないといってはみたが、数年ぶりに見るとかっこよさが増しているように見えた。久しぶりに見る元彼に思わず胸がときめく。もしかして、これが運命の分岐点?復縁も悪くないかも…。
「これから帰るところなの?」
暇ならちょっと飲みに誘ってみようかな。
「うん。子どものオムツが足りなくなりそうだったから慌てて買いに来たところ。あ、やべ、急いで帰んないと!」
そういって彼は走っていく。よく見ると両手にオムツを抱えていたし、靴はスニーカーではなくクロックス。急いで玄関から飛び出してきました、って様子。
「あはは、そっかぁ…結婚してたんだ…」
勝手に復縁を期待した私が悪いのだが、正直かなり落ち込んだ。さっきのときめきを返してほしい。電車に揺られながらふと顔を見上げると、目に飛び込んできたのはマッチングアプリの広告だった。
別に、お試しで登録してみるだけだし。そんな、出会いがなさすぎるわけじゃないんだから。ただ、試しに登録してみてもいいかなって思っただけなんだから。そうはいいつつも真剣にプロフィールを入力している私。いやいや、だって何も書いてないと怪しいじゃない?サクラだと思われるのも嫌だし。
お風呂上がりにアプリを開くと、男性から多くのメッセージが届いていた。
「あれ、私モテモテじゃない…?」