20代後半、陽介さん(仮名・公務員)の場合
写真やメッセージのやり取りだけで相手の印象を勝手に決めてしまうから「期待してたのに」って勝手に落ち込んじゃう。年齢詐称も見抜けなかったし、プロフィールの見落としだって、この先もあるかもしれない。
やっぱり運命的にばったり出会って、恋に落ちる方が私には合ってるかもしれない。そんな自然な流れのほうが、スムーズに恋を始められるかも。
「退会しよう」と思っていたときに、デートに誘ってきてくれたのがきょう会う彼、陽介さん。登録した次の日くらいから挨拶や世間話のやり取りは続いていたが、なんとなく盛り上がらないなと思っていた人だった。
「11時に待ち合わせでどうですか?」
「11時って、夜のですか?もう少し早い時間って無理ですかね」
「いや、昼の11時です!表参道に美味しいパスタ屋さんがあるので、よかったら…」
お昼のデートに誘われたのは初めてだった。これまで会った人は3人とも夜のデートだったから。明るい場所で会うのって、なんだか緊張するかも。
デート当日、待ち合わせ場所に来た彼は写真の見た目そのままの人だった。私が着くよりも早く待ち合わせ場所に到着していて、そわそわとした様子で立っていた。
私の話をうんうん、と聞いてくれて、些細なことでも笑ってくれる。「これで最後だから」という思いもあったのかな?でも、これまで会った人には感じなかった安心感があったから、私も楽しく話すことができた。メッセージで話すよりも会話が盛り上がって、気を使わずに過ごせたのは初めてだった。
ランチを済ませて「これからどうするのかな」と思っていると、陽介さんが話を切り出した。
「きょうはありがとうございました。栄子さんとお食事できてよかったです」
「私も、楽しかったです。ありがとうございました」
「あの、栄子さんがよければなんですけど、次も誘っていいですか?」
それから一週間後、私たちは二回目のデートをした。その後も何回かデートを重ねたが、毎回お昼のデートだった。
変に時間を引き伸ばさないからだらだらと時間を持て余すこともないし、会うたびに「もっと一緒にいたい」という思いが高まっていく。もしかして私、彼のこと好きになってる?
背伸びをせず飾らないプランを毎回提案してくれて、私が楽しそうに笑うとホッとしたような顔をする人。
ロマンチックなデートとはいかないけれど心から楽しいデートばかりで、何より気を使わなくていい。私のためにたくさん何かをしてくれようとする人で、私もお返しに「何かしてあげたい」と思えている。
収入や職歴とかのステータスや、見た目のかっこよさや、トークスキルの高さ。どれも魅力的だけど、真剣に付き合うならそれは二の次なのかも。陽介さんは私の心をつかんで離さない「安心感」を持っている人だった。
5度目のデートで、ついに彼から告白された。
「栄子さん、僕と付き合ってください」
返事は決まっていた。マッチングアプリで出会いを探すなんて最終手段だと思ってたけど、アプリをしなかったら彼には出会えなかったはず。私は、この出会いを大事にしたい。私、きょうでマッチングアプリを卒業します!
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- ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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