肉まんでこの恋は縮まりますか?
“どうしよ、コンビニ店員に一目ぼれした(T_T)何したらいい?”
夜中にモヤモヤした気持ちをTwitterに吐き出したまま、気づけば翌日の昼になっていた。合計3件のリプライに10件ほどのいいね。
返事を読んでみると「今度詳しく聞かせて~」という友人に、「うちの近所にもめっちゃイケメン店員いて狙ってるw」という最近仲良くなったフォロワー。そして「とりあえず顔覚えてもらおか」という、かれこれ5年くらいの付き合いになるフォロワーからの助言。
“顔覚えてもらうってどうすればいいの?こんなことはじめてすぎる、毎日通えばいいのかな?”
返事はすぐに返ってきた。
“同じ商品買い続けたら結構早く覚えると思う!私もコンビニで働いてたからわかるけど、いつも買う商品でお客さん認識してた。”
「なるほどね」思わず声に漏れる。向かいの席でスマホゲームをしていた同僚がこちらに目を向けてくる。
「なんかあった?」
「いやぁ、実はちょっと気になる人がいてね。どうしたらいいかなってTwitterで呟いたらアドバイスもらったんだ」
「なになに、どんな人?」
「コンビニ店員なんだけど、ちょっと不愛想なのに、笑うとめっちゃ可愛い」
「それはギャップやばいね」
同僚に話しているうちに昨夜のことを思い出してまたニヤニヤしてしまう。「まだたった一回しか会ってないのに、そこまで興奮できるのってすごいよ」といわれたけれど、自分でもそれはわかっている。たぶん本気で一目ぼれしてるんだと思う、名前も知らないけれど、いますごくあの店員さんに夢中だ。
「とりあえず、きょうから毎日18時過ぎに肉まんを買いに行こうと思ってて」
「あれ?ダイエット中じゃないの?」
「いいの!夜ごはん控えればいいんだから我慢するの!」
それから私は2週間、肉まんとチューハイのセットだけをコンビニで買い続けた。彼がシフトに入っていない日ですら「もしかしたら『肉まんのお姉さん来てたよ』って彼に耳に入るかも」という謎の期待を抱きながら、毎日18時過ぎに通い続けたのだった。彼は、どうやら「佐藤さん」というらしい。休みの日でも足しげく通った自分に拍手を送りたい…と、いまになって思う。