まわりの女の子より声が低い。これは、大人になったいまでも私の「コンプレックス」です。しかし某歌劇団の男役の声のようだといわれるようになり、女性から好意的に取られることもありました。
「女性がカッコイイ女性に恋をする」。それは、私には無縁だと思っていました。そう思って過ごしていた高校生時代に起こったこの恋物語は、ちょっぴり苦いものでもあったのです。
「声が低い」ことに落ち込む日々

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前述の通り、声が低いことが私のコンプレックスでした。中学生になってまわりの女の子はそれなりに「女性らしい声」になっていくのに対し、私は声が低くなっていきます。
電話に出れば「息子さんですか?」と間違われることも多くありました。当時は「声が低いだけで男の子扱いされるんだ…」と落ち込んだものです。
ときには高い声を出そうと頑張ってみたりもしましたが、なぜか歌声だけが高く、地声は低いまま。私が歌うと、周りから「どこからその高い声出てるの?」と不思議に思われ、恥ずかしいと思ったこともあります。
中学生のときに演劇部に入ってみたら、部員のほとんどが女性。そこではハスキーな声のレアさから「男役」ばかり当てられることに。でも、そのことで「嫌だな」と思うことはありませんでした。
なんとなく自分に合っているというか、違和感がなかったというか。なぜか男役をやっているときは、心地よかったのです。
それでなくても複数の女の子が周りに…

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中学を卒業し、入学した高校は女子高でした。何も進路を決めずとりあえず入ったこの高校で、私はまさかの体験をすることになります。
女子高生活は、私が想像していた以上にドロドロしていました。どこかのグループに所属し、嫌われないように表向きはなかよくし、裏で悪口をいう。こんなことは珍しくありません。こんな現実にただ驚き、どこのグループにも入りませんでした。
いつものようにひとりで過ごしていた、ある日。
「ねぇねぇ、その声カッコイイね!どこから出てるの?」
同じクラスの同級生が突然、私の腕をぎゅっと胸に抱きしめ、顔をじっと見つめながら尋ねてきたのです。一瞬ドキッとしつつ「え…あ…喉から…?」なんて、しどろもどろにいうと「照れてるの?もしかして、女の子とこういうことしたことない?」と、彼女。
そりゃないですよ、演劇以外は…と思いつつ、なぜかここで不思議なスイッチが入り、嫌な感じはしませんでした。女の子にモテるというのはこういうものなのか、となんとなく体験できたのです。
なぜ、女性はかっこいい女性にときめくのか?
当時の同級生は、「男の人は女の人の気持ちをわかっていない人も多いじゃん?女の子なら女の子の気持ちもわかってくれるし、こっちからお願いしなくても“してほしいこと”をしてくれるから」と話していました。「あぁなるほどね、そんなことがあるのね…」と、そのときは納得しただけでした。