「はじめて」は、女の子だった
進級し高校2年生となった私は、クラス替えをして環境も変わり、もう女の子からチヤホヤされることもないだろうと思っていました。しかし、それはさらに増すことになるのです。
新しいクラスで出会った元気のいいA子は、中学生から演劇をやっていたそう。そんな共通点もあり少し打ち解けたころ、A子がニコニコしながら、こんなお願いをしてきたのです。
「演劇経験者なら、演劇部に入ってほしい!部員がいま4人しかいなくて、先輩が辞めたら2人になって廃部になっちゃうの」
「うーん…私ね、中学のときに喉壊しちゃって、もう舞台には上がらないでいるつもりなの」
断ると、A子は悲しそうな目で私を見つめつつ「せっかくの王子様ボイスなのにもったいないよ!」なんて、褒めそやしてくれました。そんなふうにあまりに熱心に誘われ続け、結局入部することに。
私が入部し舞台に立ったことで、少なからずこの声に魅力を感じてくれた人がいるのでしょう。「憧れています」といいながら、熱っぽい瞳で演劇部に入部する人が続々と現れました。
そしてそのうちの1人、後輩部員のM美に「付き合ってほしい」といわれ、よくわからないまま付き合うことになったのです。これが、人生ではじめてのパートナーでした。
まだ幼く、戸惑うこころ
部活は週に4日間あったので、学年は違ってもほぼ毎日M美には会っていました。M美は私が苦手としていた、その女子高にあった「ドロドロ感」を一切出しませんでした。同性であっても、男性が思わず胸キュンするような気遣いや立ち振る舞いをしてくるので、日々驚くばかり。
舞台には上がらず裏方のスタッフとして劇に参加し、舞台に上がっているほかの生徒のフォローまでしっかりするM美。そんな彼女に、ある日「将来男性と付き合う気はないの?」と尋ねてみると「あなたと結婚する!」と笑いました。
「この子は同性愛者なんだ」と、そのときようやく理解したのを覚えています。M美のことは好きでしたが、まだ恋愛について幼かった私は、それにどう返したらよいのかわからなかったのです。