ふたりの最後
恋愛経験のない私は、誰かと付き合うことの難しさをそのときはじめて知りました。何をしたら相手が喜ぶのか、寂しいと思うのか…。舞台での恋愛と違って、リアルな恋愛には台本がない。
当時の私は、いまでいうところの恋愛の指南書なるものも読んだことがないほど、恋愛に興味も関心もありませんでした。M美とデートへ行ったときは、彼女がどうしたら喜ぶのか、楽しいと思うのか、そういったものにそもそも考えが及ばなかったのです。
悩みながらもできるだけ、彼女のオーダーに沿うようには頑張ってみる。その結果、たぶん私は恋愛的にたくさんの失敗をして、M美を傷付けたこともあるでしょう。
でもM美はいつもキラキラしていて、恋に対するパワーを持っていて。そのパワーになんとなく気押されるような私には、もったいない人なのだと感じていました。
彼女はドロドロした女子高生活のなかで、唯一ピュアで可愛い子だったと思います。男性ウケもいい子だなとは思いましたが、会話から察する限り、男性を恋愛対象にはできないようでした。
同性同士の恋愛は、楽な部分もあれば難しい部分もあります。それでも異性同士と同じように倦怠期は何度もやってきますし、1度喧嘩になれば長く続くことも…。最後は私が高校を卒業したと同時に、M美との交際もフェードアウト。それ以降、私はいつのまにか男性と付き合うようになりました。
彼女がいまどのような人生を送っているかはわかりませんが、あのパワーあふれるキラキラしたM美なら、きっと幸せになっていると思います。
「男」も「女」も、愛することは何も違わない
社会人になり仕事をはじめると、今度はこのハスキーな声に対して「イケボ」といわれるように。声フェチの女性から「付き合ってほしい」と告白されることもありましたが、いまは男性のパートナーがいます。
異性と付き合ったことも、同性と付き合ったこともある私からすると、どちらと付き合っても「特に何も違いはない」と思います。互いを愛しく大切に思う気持ちも、たまには煩わしく感じながらも離れがたい気持ちも、そこに違いはありません。
残念ながら2021年現在の日本では、戸籍上同性同士であるカップルに対し、一部地方自治体による「パートナーシップ制度」のみしか導入されておらず、同性婚は認められていません。
同性同士だからといって選択肢が失われている現状を、私は不思議に思います。だからこそなるべく近い将来、異性間の婚姻関係と同じように「結婚する・しない」を選べる権利を同性同士のカップルも持ち、自由な選択ができる日がくることを願っています。
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