私たちが「ベッドイン」するまでの経緯
昨夜、私は友人たちと飲みに出かけていた。同棲中の彼氏が出張で3日間家を空けるというので、きょうはべろべろに酔っぱらってやるという気持ちだった。
普段からよく遊ぶ飲み仲間たちを誘って、総勢5人で夜の繁華街に繰り出す。最初は焼き鳥屋でワイワイ飲んだくれ、二軒目はちょっとおしゃれなバーに行き、三軒目で「さぁ朝までオールナイトカラオケでもしようか」というときだった。
全員結構酔っぱらっていて、テンションは最高潮。「いまの私たちは無敵」という気分で通りを歌いながら歩いていく。
事件はここから起きる。
カラオケについてからしばらくして私はトイレに立ち、部屋に戻ろうとしたときだった。
「あれ、部屋どこだっけ…」
スマホも部屋に置いてきてしまい、なんとなくここだったような気がすると思いながらドアを開けてみる。
「お姉さん、部屋間違ってるよ」
間違って開けた部屋には男性が4人いた。そして唐突な乱入者である私を見て全員固まっている。
「げっ、ごめんなさい!」
慌ててドアを閉めようとすると、その手を阻まれる。
「お姉さん、部屋どこ?」
「ええと…」
「友達と来てるの?俺たちと一緒に歌わない?」
ナンパだ…。茶髪のいかにもチャラそうな男性は、ずっと私の腕をつかんだまま離さない。この場で叫んでやろうか、そう思ったときだった。
「お前やめろって」
男性の友人が部屋から出てきて、私の腕をつかんでいた手を払ってくれる。黒い短髪で、真面目そうな風貌だった。筋肉質で背が高い。私のタイプドンピシャのお堅め男子だ。
「ごめんね、困るよね。もう行かないように言っとくから」
「あ、はい。ありがとうございます」
ドキドキしながら黒髪の男性の後ろ姿を見ていると、すぐ近くのドアが開いた。
「大丈夫?部屋忘れちゃったの?」
友達の桃子だ。ガラス張りのドア越しに私の姿を見て、気づいてくれたらしい。
「えっ、てかいまの人たち誰?めっちゃイケメンだったんだけど」
「だよね?あの黒髪の人めっちゃカッコよかった…」
「そっち?私は茶髪派」
桃子と私が話していると、みんなも身を乗り出してくる。
「なに?イケメンいたの?」
こうして、私たちは男性グループの話題で盛り上がることとなったのだった。
それからはよく思い出せないのだが、廊下などですれ違う男性グループの誰かしらと話すことが増え、彼らも私たちもどんどん親しくなっていった。部屋を行き来することはないものの、桃子やほかの子はお目当ての男性と連絡先まで交換していた。
そして夜中の3時。気づけば桃子を含め3人が、男性と一緒にカラオケを抜け出し、部屋には女子2人になっていた。
「うちの彼氏迎えに来てくれるって言ってるけど、乗ってく?」
友達が声をかけてくれるので、甘えることにした。
…と思ったのだが、帰る前にトイレに行こうと立ち上がったところで黒髪の男性にまた遭遇する。「俺たちも、抜け出さない?」そのあとのことはもうよく覚えていない。たしか友達に「私も呼ばれちゃった」とか言って、そのままお金を置いて帰ったような…。
気づいたら私の家のベッドのうえで、男性と一晩を共にしていたのだった。我ながら、警戒心のガバガバ加減が最悪だと反省している。