Kからの連絡
私はあの夜、Kと男女の関係になりました。Kと繋がったのは金曜日であったため、土日を悶々と過ごすことになります。あの夜の出来事を考えるたびに、熱く、ムズムズする感覚が体を這いました。
ホテルを出て以降、Kからの連絡はない。そもそもKと連絡したことなんてないのですが、少しだけ期待してしまう自分がいたのです。
普段の休日ならスマホなんて電源を切ってしまいたいくらい不必要なものなのに、きょうだけは無駄に確認してしまう。でもKはいまごろ、噂の彼女とデートでもしているのかもしれない。
お酒の入ったあの流れでの男女の行為は、私の体ではなく、あくまで女の体をほっしていただけである。それなりに経験をしてきた私は、そのことをしっかりと理解しています。しかしながら、欲望に忠実すぎる私は、あともう一度だけ…あの夜に戻りたいと願ってしまったのです。
結局、Kからの連絡は来ないまま、月曜日を迎えました。
あの夜は本当に現実だったのか?
職場に出勤してきたKは、あの夜の彼ではなくなっていました。
180cmオーバーの高身長、韓流アイドル風の容姿、黒髪のフワフワな犬っ毛で、社交的であり、仕事ではいつも好成績、誰からも慕われる存在。そんな、同じ部署の先輩に戻っていたのです。
「できればもう一度お相手願いたい」と心のどこかで思っていた私と裏腹に、Kは私を気にする様子もなく、いつも通り完璧な仕事をこなします。二人きりで話す場面があっても、あの夜のことについては一切触れず仕事の話だけでした。
「あの夜の出来事は幻だったのか?」と疑ってしまうほど、何事もなく接してくるK。このとき、この男は一瞬でも私のものではなかったということや、もうあの夜に戻れないことを実感しました。
呆気ない終わり方に虚しく感じる一方で、気持ちが悪いドロドロの関係にならず終わることに、清々しさも感じます。そもそも互いに恋愛感情はなく、私も周囲の人を傷つけず、お互いが心から納得したうえの都合のいい関係(ベッドの友達)を第一にしていたので、いくらKともう一戦交えたくても、諦めざるを得ません。
あれ以降Kと深く関わることもなく、同じ部署の先輩と後輩として接し、日々が過ぎていきました。