「不倫」
この言葉にあなたはどんな気持ちを抱きますか?嫌悪、怒り、スリル、裏切り…それとも、愛?
一度ハマったらなかなか抜け出せない不倫沼。ダメだとわかっているのに、別れることができない。そうしてときを重ね続けた結果、そこに残るのは絶望と悲しみ。いままで築き上げた愛情を、一瞬で壊してしまう可能性だってあります。
さて、今回は不倫の沼に溺れてしまい、大切な夫を傷つけてしまった妻の視点からエピソードをご紹介。不倫が夫にバレたとき、あなたならどうしますか?
- おもな登場人物
- 由紀:この物語の主人公、「私」
- 夫:結婚して3年が経つ由紀の夫
- 陸:のちに由紀の不倫相手となる大学生
バレなきゃいい。はじめは軽いきもちだった

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私が夫と結婚したのは3年前…27歳の夏。もし女の子を出産したら、夫みたいな素敵な男性と出会ってほしいなと思っている。だから、まさか私が不倫をすることになるなんて、このときはちっとも思っていなかった。
それは、友人と久しぶりに会って飲んでいたときのことである。
「ねえ由紀、私今度結婚するじゃない?その前に相席居酒屋に行ってみたいの!付き合って!」
「ちょっと待ってよ、私は既婚者なんだけど?」
「大丈夫だって、私口堅いから。それに一晩くらい不倫しちゃってもバレなきゃ大丈夫だよ」
「あのねぇ…」
そのときは「絶対行かない」と決意していた。
しかしお酒も程よく回ってきたころ、私は勢いで友人の誘いに乗ってしまったのだ。「二軒目は相席居酒屋行こうよ!」「行く行く!」的な軽いノリである。
夫には内緒だけど、たまにはこんなスリルを味わうのもいいよねと、そのときの私は軽く考えていた。
後悔したってもう遅い、一度ハマったら抜け出せない沼

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はじめての相席居酒屋で戸惑っていた私たちだが、すぐにその不安は消えた。男子大学生ふたりと一緒に飲むことになったのだが、彼らはとにかくノリがよかったのだ。
そしてあっというまに酔っぱらってできあがった私たち。気づいたら友人は、男子大学生の一人と抜け出していなくなっていた。そして私も、居酒屋の外で男子大学生の陸くんとふたりきりである。
「私、夫が待ってるから帰らなくちゃ」
夜風に当たって酔いが冷め、突然夫の存在を思い出した。友人に「隠しときな」と言われた結婚指輪を財布から取り出し、薬指にはめる。
「お姉さん、結婚してたんですか」
「うん…ごめんね、騙したみたいになっちゃって」
「お友達に誘われたって感じですか?実は俺もなんですよ」
彼女がいるんです、と少しはにかむ彼。
「遠距離なんで、気持ちは冷めきってるんですけどね」
はは、と笑う陸くんを見て「かわいい」と感じてしまった。アルコールのせいだろうか。夫には抱かない、恋のときめきを感じている自分がいる。
いくら夫が好きでも、もう恋人のように扱ってくれることはないし、いい意味で「家族」になってしまった。だからこんな、胸がキュッとなるような気持ちはドラマや漫画でしか得られないと思っていた。
「私、このままここにいたら変なこと言っちゃいそう」
ふと、想いが言葉になってもれてしまった。何を言ってるんだろう、これじゃあ不倫したいみたいじゃん。慌てて訂正しようとすると、パッと腕を掴まれた。
「変なこと、って何ですか」
「いや、その」
「不倫とか、考えてます?」
じっとこっちを見つめる陸くん。私は思わず目をそらした。
「俺も、お姉さんとならそうなりたいって思ってます」
思い返せば、あのとき「冗談だよ、じゃあね」と言ってすぐタクシーに乗ればよかった。そうすれば、夫のあんな顔は見ずに済んだはずだ。
でもはじめての相席居酒屋と、久しぶりの飲み会と、新鮮なときめきで、私は正常な判断ができなくなっていた。このスリルを楽しんでしまっていた。
そうして身体を重ねた瞬間、もうお互いから離れられなくなっていた。
「俺、また由紀さんに会いたいです」
陸くんのその言葉で、「ワンナイトで終わらせよう」という決意は一瞬で消え去るのだった。