浮気、DV、借金、レス、義実家問題…離婚を考える理由は人それぞれ。
Webメディア「by them」は離婚経験者30名にアンケートを行い、経験者はどういった点で悩み、改善を試みて、離婚を選んだのか?さらに離婚後の心境についても伺いました。
今回は、妻からのモラハラを受けていた正和さん(仮名/43歳)の離婚事例をご紹介します。
- 本記事は離婚を推奨するものではなく、あくまで身近な例として離婚事例を紹介するものです。
- 登場人物はすべて仮名です。
- アンケート内容をもとに一部ストーリーを作成しています。
僕が意地悪妻から解放された日
回答者プロフィール(すべて離婚当時)
- 年齢/職業:正和さん(夫)43歳、由里子さん(妻)44歳/共に会社員
- 子どもの有無/実親・義理家族との同居:⻑⼥13歳、次⼥11歳/なし
- 結婚年数/離婚時期:10年/2020年ごろ
- お住まい:関東エリア
あのときは大好きだった妻

image by:Unsplash
「正和さん、私たちそろそろ結婚しましょうか」
まさか自分が、逆プロポーズされるなんて思ってなかった。
「はい、よろしくお願いします」
これが10年前、私たちが夫婦になった瞬間だった。
あのときはあんなに愛していたのに。幸せな暮らしを夢見ていたのに。結婚後の私に待っていたのは、胃の痛むような毎日だった。
由里子は私の1つ年上。大した年の差ではないものの、年上としてのプライドからか私をリードしてくれることが多かった。付き合っていたころはその姉御肌な一面が好きだったし、結婚してからしばらくも彼女に甘えていた。
しかし、頼れる姉御だったはずの妻は、気づけばただ意地悪なだけの妻になっていた。気づいたときにはもう、手遅れだったんだと思う。
「おはよう」
寝室を出てリビングのドアを開けると、ボーっとした顔でテレビを見つめる娘たちが振り向いた。
「お父さんおはよう、寝坊だよ」
「ああ、急がないと」
キッチンでは、由里子がせわしなく動いている。
「おはよう、由里子」
返事は、ない。
結婚してから10年も挨拶を無視され続けると、さすがに慣れてしまった。
しかしこちらも挨拶をしなくなったら教育的によくないだろうと思い、なんとか声をかけ続けている。きょうもまた、返事がないとわかっていながら由里子に挨拶をするのだった。
由里子が挨拶を返してくれないのは朝だけではない。いってきます、ただいま、おやすみ、どれひとつ聞いたことがない。娘たちには挨拶をするが、私に対してはひたすら無言を貫く。
何か怒らせてしまったのだろうか、不機嫌だからわざと無視しているのだろうか。そんな思いで様子をうかがっていたが、いつまでたっても理由はわからなかった。
妻はなぜ、私と結婚したのだろうか
由里子の態度がおかしいのは挨拶だけではない。
「きょう、残業で帰りが遅くなるから、食事なんだけど…」
「作らないから、適当に食べてきて。はいお金」
こちらを見ずに、由里子は私に千円札を渡してきた。
「あの、帰ってきたら適当に温めるから、残り物でもあると嬉しいんだけど」
「無理」
「そっか…」
千円札を眺めながら、私は気まずさから少し目線を下にずらした。
「大体、残業して帰ってくるってことは、あなたの仕事が遅いってことでしょ?仕事ができる人なら残業なんてしないはずだけど」
「そんな言い方ないだろ…」
「もっと効率のいい働き方とか見つけられないの?何年会社員やってるのよ。私のほうがもっとうまく働けるわ」
またはじまった。由里子はこうして、私を見下してくる。機嫌が悪ければさらにひどい。
そして由里子の態度が冷たいのは、こうした会話だけではなかった。
「夏休み、ここ行きたいの!」
娘たちと夏休みの計画を立てていたときのことだった。人気テーマパークのホームページを眺めてキャッキャ、と騒ぐ子どもたち。
「じゃあここにしようか。たしか近くにコンセプトルームのあるホテルがあったんだよ」
私がホテルの部屋を画面に表示すると、娘たちはキラキラと顔を輝かせる。プリンセスをモチーフにした豪華な部屋。テーマパークのすぐ隣にあるホテルは人気で宿泊代も少々高めだが、娘たちのために奮発しようと私は考えていた。
「なあ由里子、このホテルどうかな」
「却下」
由里子が無表情で近づいてくる。さっきまで喜んでいた娘たちが急に静かになった。
「こっちのビジネスホテルでいいでしょ。ホテルにお金かけるなんてもったいないわよ。素泊まりだと安いし、こっちにして」
「でもほら、これ、見てごらんよ。子どもたちの好きなプリンセスの」
「好きなキャラクターグッズを買えばそれでいいでしょ?あなたがそういうのを見せなければ、子どもたちだって知らずに済んだのに。そういう無駄なことばっかりしてるから、いつまでたってもあなたってどうしようもないのよね」
結局夏休みの旅行は由里子の言う通りビジネスホテルになった。
子どもたちのしょんぼりした顔に胸が痛んだが、なんとか旅行自体は楽しんでくれたので安心した。
我が家では妻の発言が絶対だった。私の意見が通ったことなど一度もない。旅行に限らず、どんなときでも私に発言権が与えられることはなかった。