「私の夫に触らないでください」
夫の不倫現場を現行犯で取り押さえようと、ホテルのフロントで待ち伏せしていた舞花。しかしそんな舞花に投げかけられたのは、不倫相手からの思わぬ一言だった。
秀一を「自分の夫」だと言って叫び続ける女。そして舞花は、秀一のとんでもない嘘を知ることになる…。
第1話:私が抱いた夫への違和感。チャイルドシートを乗せた新車で彼は…
第2話:ホテルで夫と不倫相手を待ち伏せした妻、フロントで鉢合わせた3人の修羅場
第3話:明かされる新車の真実
- 登場人物
- 舞花:この物語の主人公
- 秀一:舞花の夫
- 女:秀一の不倫相手
まさかの警察沙汰に

image by:Unsplash
「私の夫に触らないで!誰なんですか!?」
女が秀一の腕を掴んだまま絶叫する。私は女の行動の意図が分からず、戸惑うしかなかった。そのまま女は泣き出し、秀一にしがみつく。
「あなた、何言ってるんですか…?」
やっと事態の異常さに気づいて、私は秀一の顔を見る。そのとき、私は秀一のことを「知らない男だ」と感じてしまった。なぜなら秀一は私の顔など一切見ず、女を慰めていたのだ。
「ねぇ秀一こっちを見て…」
「きやすく私の夫の名前を呼ばないでよ!」
この人は一体何を言っているの?状況がちっとも理解できない。呆然としていると、フロントからホテルの従業員が出てきた。
「すみませんが、ほかのお客様の迷惑になるので」
「じゃあこの女をここからつまみ出してよ!私は夫とホテルに来ただけなんですよ!?」
不倫女は私を指さし、きつく睨みつけてくる。そして秀一は、私の顔を一度も見ない。
「秀一…」
怒り、不安、戸惑い、恐怖。いろいろな感情が入り交じり、私はとにかく混乱していた。
「はぁ、じゃあお客様はこちらへ」
従業員は私の肩をたたいて、出口まで誘導しようとした。
「待ってください!妻は私です、彼女が夫の不倫相手です」
「嘘をつくな!」
甲高い声がフロントに響き渡る。顔を真っ赤にして叫んだ女に、私はもうどうすればいいかわからなかった。
「嘘なんてついていません、私が…」
従業員はうんざりした顔で私と女を見比べる。
「いい加減にしてください。警察呼びますから」
女の顔が曇る。警察という単語に驚いたのだろう。しかしそれも一瞬だった。
「早く警察にその女を連れて行かせてよ!秀一、早く部屋に行こ」
「う、うん」
「ちょっと待ってよ、秀一!何考えてるの?」
女に連れられ歩き出そうとする秀一の腕を私は慌ててつかんだ。
「ねぇ、私たち夫婦だよね?」
私の問いかけに、秀一は何も声を出さない。
「触らないでって言ってるでしょ!」
女に理不尽に怒鳴り散らされ続け、だんだん惨めな気分になってくる。それと同時に、秀一への不信感がとめどなくあふれてきた。