大事な友達と大事な彼
「それじゃあリサ、セレブ婚も夢じゃないわね!」
賢一とのデート続きでしばらく参加できていなかった女子会に、久しぶりに顔を出す。
「いいなぁ、彼氏にバーキン買ってもらえるなんて!リサ、最高に幸せじゃん~」
「えへへ、ありがと」
リサは愛想笑いをした。羨ましくて羨ましくて、仕方がないくせに。SNSのフォロワーが増えたとか、配信サイトのランキングが落ちたとか、案件が不調だとか、そんなことばっかり気にしているあなたたちとはもう違うの。私はね、真のお金持ちの仲間入りをするの。
あの日婚活パーティで見たハイクラスな女性たちと肩を並べるようになるの。あなたたちみたいな「インフルエンサー」なんて、ちっとも怖くないのよ。そう考えると、リサはますます笑うのを止められなかった。
「リサのこと連れて行ってよかった」
千晶がリサの横でにっこりと笑う。千晶はリサと色違いのバーキンを持ってきていて、「一緒だね」と笑ってくれた。賢一をうらやましがる素振りも見せず。いつも通り穏やかだった。
「千晶のおかげだよ、ありがとう」
婚活パーティに連れて行ってくれた千晶に感謝する。千晶は実家も裕福で社長のお客さんも多いから、こういったハイクラスとのつながりが多い。身なりも誰よりも高級で洗練されている。リサは、これから大事にすべきは千晶のような友人だと確信した。
「リサ、お待たせ」
ふと後ろから聞きなれた声がする。賢一だった。
「賢一さん、ありがとう!お迎えに来てくれて」
「いいなぁ、彼氏さんのお迎え?羨ましい~」
「めっちゃイケメンじゃん。リサ良かったね!」
友人たちの羨ましそうな声がうっとうしい。なんて品のない人たちなんだと、リサは心の中で叫んだ。そのとき、千晶が立ち上がってお辞儀をした。
「いつもリサがお世話になってます」
ニッコリと賢一に挨拶をし、リサの肩にそっと手を添えた。
「リサをよろしくお願いしますね」
「千晶、もう…恥ずかしいって」
「だって、リサは大事なお友達だから」
千晶の対応に思わず胸がキュッとなる。下品な友人たちと違って、千晶はこうした気遣いもできるのだ。
「そうだ、賢一さん。千晶ね、最近彼氏とお別れしたばかりなの。大事な友達だから、素敵な人がいたら紹介したいな」
「そうなんだ。えっと、千晶さんでしたっけ。いい人いたら、連絡しますね」
「わぁ、ありがとうございます」
友人想いな自分の対応に、リサは思わず酔いしれる。
帰りの車に乗ったとき、リサは賢一さんに問いかけた。
「私の友人たち、どうだった?特に千晶なんて、とっても美人だと思うの」
「そうだね…綺麗な子ばかりだった。でも、リサが一番可愛いよ」
「本当?うれしい!」
リサは賢一の優しい言葉に心躍らせる。
「ところで、あの子たちはみんなSNSやってるの?」
1人でウキウキと舞い上がってるリサに、賢一は問いかけた。リサは、賢一の真意なんて知らずに明るくうなずくのだった。
NEXT:2022年4月8日(金)更新予定
- image by:Samuel Ponce/Shutterstock.com
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- ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。