惨めな家族?

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結婚式当日、リサはSNSでひたすらハッシュタグを検索していた。結婚式用にリサが作った特別なハッシュタグだ。
「みんな写真投稿してくれてるかな…わっ、すごい、もうこんなにたくさん!」
SNSには、参加者たちがフォトブースで撮った写真を続々と上げている。ほとんどがリサの友人たちだったが、なかには賢一が呼んだ招待客もいた。
「この人、自家用ジェット持ってるの?え、会社すごい持ってるじゃない。わぁ、お医者さんに弁護士さんまで…」
賢一の友人たちのスペックの高さにひと通り驚いたころ、コンコンと部屋のドアがノックされる。
「リサ、紹介するよ」
賢一が、自分の両親を連れて部屋に入ってきた。実はまだ顔合わせもできていなかったのだ。
「俺の父。海外で会社を経営していて、きょうは結婚式のためにわざわざ帰ってきてくれたんだ。母も通訳の仕事でなかなか時間が取れないんだけど、リサに会いに来てくれたよ」
賢一の両親はシャン、と背筋を伸ばし、リサをニッコリと見つめている。
「はじめまして!これから、よろしくお願いいたします!」
多忙だから、と会えずにいた賢一の両親。改めてそのスペックの高さに、リサは思わず声を震わせた。
「急に賢一が結婚するっていうからどんな人かと思えば、とってもかわいいお嬢さんじゃないの」
「賢一に何か嫌なことされたら、すぐ連絡してきなさい。ガツンと怒ってやるからね」
義理の両親の言葉に、乾いた笑いをすることしかできなかった。
賢一と義理の両親が部屋を出たのとほぼ同時に、またドアがノックされる。入ってきた自分の母親の顔を見て、リサは思わずホッとした。
「賢一さんのご友人って本当、裕福な人ばかりなのね」
「どうして?」
「ちょっと話を聞いてたら、弁護士さんとかCAさんに、モデルさん、さっきあのブランドの社長令嬢さんも来てたのよ。びっくりしちゃった…母さん、浮いてないかしら」
「大丈夫だよ」
「賢一さんのご両親もすごいかたじゃない。うちなんて、中小企業のサラリーマンにパートの主婦。普通の一般家庭だから…」
「十分立派じゃん。何いまさら気にしてるのお母さん」
「なーんかね。肩身が狭いよ…ごめんね、リサ」
ポツリと母親が呟いた言葉が忘れられない。スペックの高い新郎の友人たちを見て、母は何を思ったのだろうか。