唯一の親友、千晶への信頼
賢一の招待客は女性が圧倒的に多かった。話を聞くと、事業の相談に乗ってもらったり、お世話になったりしたんだという。職業を聞いてもあまりハッキリ答えてくれない。
ただどこかで見たことがあるような人もちらほらいて、リサは「有名人なのかな」とぼんやり考えていた。
「リサ、結婚おめでとう~!」
披露宴の最中、緊張のため味のしない高級すぎる食事を口に入れていると、友人たちがリサの近くまでやってきた。
「リサ、本当にキレイ!すっごく素敵だよ!」
皆の笑顔が心にしみる。なんだか心がホッとして、リサはすぐに意識を戻す。
「ねえ賢一さんのお友達と連絡先交換しちゃったの!私もセレブ婚できるかな」
「私もさっき、あとで飲みに行きましょうって誘われたの!どうしよう、彼氏には内緒にしなきゃ」
キャッキャと騒ぐ友人たちを見て、リサは急に嫌悪感を覚えた。恥ずかしくてたまらなかった。
賢一さんの友人女性たちを見習ってほしい。誰も男性に連絡先を聞かれて喜んでいる人なんていない。スマートにお酒を飲んで、お祝いの席を楽しんで、静かに会話をしている。TPOに合わせた立ち振る舞いで、その場に溶け込んでいる。
リサはその一瞬で決めた。「いま私が嫌悪感を抱いたということは、彼女たちはもう私に釣り合う人間ではないということだ」と。そんな友人、もう私にはいらないと。
「リサ、リサ」
パッと顔を上げると、千晶がシャンパングラスを持って立っていた。
「千晶!きょうは来てくれてありがとう」
「こちらこそ、結婚おめでとう」
ああやっぱり、千晶はどこまで行っても私の友達にふさわしい女の子だ。下品な話で盛り上がらないし、立ち振る舞いも美しい。
「千晶のこと、呼んでよかったぁ」
「え?何か言った?」
「ううん。これからも千晶はずっと、私のそばにいてね」