会員制の婚活パーティーで若手実業家の賢一と知り合ったリサ。関係はトントンと進んでいき、ついにプロポーズされる。
暮らしが裕福になっていくにつれ、リサはセレブな生活に合わない友人たちをどんどん切り捨てていく。
そうして迎えた結婚式当日。賢一の招待客は有名キャバ嬢を含め、スペックの高い女性が圧倒的に多かった。肩身の狭い結婚式と二次会を終えたリサは、疲れて先に帰宅。そして賢一は、一人で朝帰りをしてきたのだった。
第1話:男や友人を「顔や金」で選ぶ女。ハイクラス婚活で奪われ、手に入れたモノは…
第2話:女ばかり結婚式に招待する夫。妻が「恥ずかしくてたまらない」と思った最悪の瞬間
第3話:不倫相手を新婚旅行に同伴した夫との末路
- 登場人物
- リサ:この物語の主人公
- 賢一:リサの彼氏
- 千晶:リサが唯一心を許している親友
寂しい新婚旅行

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結婚式の二日後、リサはバリ島の高級リゾートホテルに新婚旅行に来ていた。
「最高の景色!写真撮らなくちゃ!」
真っ青な海がリサを出迎えてくれる。ホテルの前のビーチで温かな風に吹かれながら、美しい眺めにスマホを向けて、リサは写真を撮り続けた。
「あとでスパも行っておいでよ」
「スパ?行く!賢一さんも一緒に行くよね?」
「ごめん、俺ちょっと仕事があってさ」
「そうなんだ…忙しいんだね」
せっかくの新婚旅行だったが、賢一は仕事で部屋にこもりがちだった。新進気鋭の若手事業家。休む暇など本当はないのかもしれない。
「新婚旅行、無理しなくてもよかったんだよ?そんなに忙しいなら…」
「大丈夫だよ。これは俺が来たかったから計画したの。リサは気にしないで。むしろごめんね、夜は一緒に居られるから」
賢一は申し訳なさそうに笑うとリサの頭をポン、となでた。その途端に賢一のスマホに電話がかかってきて、また足早に、部屋へと戻っていく。
「仕事の電話かな。まぁ、仕方ないかぁ…」
ビーチに置いてある椅子に腰かけると、目の前をたくさんのカップルや夫婦が横切っていく。
「私はただ、忙しい夫を支えているだけだから」
羨ましいと思う気持ちを抑えながら、SNSにリゾートの写真を投稿した。どんどん増えていくいいねの数がリサの心を安心させる。
そのとき、千晶が「知り合い限定」でストーリーを上げているのに気づいた。
「珍しい、千晶ってストーリーの限定公開とかするんだ」
ストーリーをタップすると、いまリサが見ているものと似た景色が表示された。まぎれもなく、バリ島の景色だ。
「あれ?千晶もバリ島にいるのかな。お客さんかな、家族かな」
リサは千晶にすぐメッセージを送ろうとする。しかしもう一度見ようと思ってストーリーをタップすると「このストーリーは削除されました」と表示された。
「あれ?おかしいな…」
「ごめんリサ、お待たせ」
不思議に思っていると、賢一が息を切らしてリサの元へ戻ってきた。
「仕事、もういいの?」
「うん、ちょっとした電話だけだったから大丈夫。昼ごはん食べに行こうか」
「うん!あ、そうだ…なんかこっちに私の友達も来てるみたいなの。千晶って覚えてる?」
「え?」
「いまストーリーに上がってたんだけどすぐに消えちゃった。同じ海の写真上げてたんだよね」
リサが不思議そうに尋ねると、賢一は少し動揺しだす。
「…どうかした?」
「いや、べつに?そんなことより、早く昼ごはん行こうよ」
「うん…」
賢一の少しだけ慌てたような様子に、リサは少し不安を感じた。
「ねえ、もしかして千晶に会った?」
「え?なんで?」
「だって、千晶の話したら動揺しだしたから」
「だから、何?」
強い言葉尻。明らかにイライラしている。
「何って…会ったなら教えてよって思って。私も千晶に会いたいし…」
「会ってないけど」
「そっか…でも、だったら」
「めんどくさ」
「え?」
「俺さ、仕事で忙しいのわかんないかな。めんどくさいこと言ってこないでよ。はぁ、テンション下がるわ」
「ご、ごめんなさい…」
賢一はまた、スマホでどこかに電話しながらリサの元を離れていった。バリ島のキレイなビーチの目の前で、リサは1人、ポツンとその背中を眺めていた。