第1話:男や友人を「顔や金」で選ぶ女。ハイクラス婚活で奪われ、手に入れたモノは…
第2話:女ばかり結婚式に招待する夫。妻が「恥ずかしくてたまらない」と思った最悪の瞬間
千晶の本性とリサの罪
心臓の音が大きくなる。なぜか寄り添って写真に写っている2人を見ているうちに、頭のなかがどんどん熱くなってくる。
賢一は仕事に行ったはずでは?千晶はこれから仕事のはずでは?
そのとき、スマホが鳴った。
「はい、もしもし」
『リサ?俺、ゆかりの彼氏だけど』
ゆかり…結婚式に招待し、その後賢一の招待客と親密にしている様子をストーリーに上げていたので、釣り合わないと思ってリサがブロックした子だ。その彼氏が何の用だ。
『お前の結婚式に来てた男とさ、ゆかりが浮気してるみたいなんだよね。リサ、その男の連絡先とか知らないかなと思って…きのうから帰ってこないんだよ』
「え?どういうこと?」
『リサもしかして何も知らない?』
「知らないって、何が…」
『リサの結婚式の三次会かな、みんな新郎の友人たちにお持ち帰りされたらしいんだよ。お前の旦那もたしか千晶を持ち帰りしたとかって噂が…あっ、ごめん。新婚さんにこんなこと言って』
「ううん、そうなんだ…ありがとう、教えてくれて」
ぷつり、と電話を切るのと同時にリサの思考も止まった。
「どういうこと?」
何も考えられなかった。考えがまとまらず、理解もできず、リサはただ震える手で千晶に電話をかける。
「ねえ千晶、あなた賢一さんと寝たの?」
『…えっ?どうして?』
「いまだって一緒に居るんでしょ?私知ってるんだから!」
『ちょっと落ち着いてよ』
「聞いたんだよ、結婚式の三次会で賢一さんにお持ち帰りされたこと!それにいま一緒に居る様子も、マイちゃんのストーリーに載ってた!」
『あー…』
しばらくの沈黙の後、千晶が聞いたこともない低い声で呟いた。
『いまさら?』
「え?」
『仕方ないか、二次会で帰っちゃったし、みんなのアカウントもどんどんブロックしてるもん。情報とか入ってこないよね』
「そんな言い方…」
『それで、お持ち帰りされてたらなんだっていうの?』
「いや、不倫でしょ!迷惑なんだけど!」
『迷惑って、リサに言われたくないなぁ』
「は?」
『スペックで友達を選んで平気で切り捨てるリサに、やめてほしいな~なんて言われてもいまさら誰も聞いてくれないでしょ。人に対する優しさとかリスペクトとかなんにもないわけじゃん。そんな人に対して失礼かな、なんて考えないよ誰も。自業自得じゃない?』
「ちょっと、自分が何言ってるかわかってるの?人のことバカにするようなこと言わないで!」
『バカにしてたのはそっちでしょ?いままでリサにブロックされた子たち、みんな言ってるよ。人のことスペックだけで判断して見下すような女が、スペックだけ見て結婚しても幸せになんてなれるはずないよねって』
「なっ…」
『それでも私はリサに付き合ってあげてたのに…いつか直るかなって期待してたんだけどなぁ』
リサは何も言えなかった。何も言えず、ただ無言で唇を噛むことしかできない。
『そうだ、この電話を切ったらきっと私のこともブロックするよね?最後にいいもの送ってあげる』
クスクスと笑う千晶の声が、リサの耳に残る。
『ステータスだけで友人を選んでるから、人の本質が見えないんだよ。類は友を呼ぶって知ってる?ああ、私も性格が相当悪いみたいだから、リサの友人としてお似合いだったのかもね』
ブチッと電話が切れたかと思うと、すぐに千晶から一通の写真が送られてきた。
バリ島で、なかよく寄り添っている賢一と千晶の写真だった。
写真はその後も次々に送られてくる。
新婚旅行中、賢一は仕事だと偽って、コッソリ千晶と会っていた。
新婚旅行は2人きりではなく、千晶も一緒だったのだ。
「やだ、嘘だ!」
リサが1人で写真を撮っている間、賢一は千晶と一緒に写真を撮っていた。1人で寂しく海を眺めている間、海に見守られて2人は抱き合っていた。そんな現実が受け入れられない。
最後にリサに送られてきたのは、いままさに千晶と賢一がデートをしている様子を動画で撮影したものだった。