夫が離婚した「本当の」理由
『あのさ、前の奥さんって玲奈さんっていうんだよね』
最近の様子を心配してか、友人が頻繁に電話をくれる。仕事帰りの数分間。「姑や夫が近くにいて電話に出にくかったらブチッと切っていいから!」と言ってくれるのがありがたい。
話すたびに私の声色が沈んでいっているんだろう。ちゃんとご飯を食べているか、睡眠はとれているか、ストレス発散できているかなど、丁寧にいつも気にかけてくれる。いまはそんな友人の存在がありがたかった。
きっと嫁姑関係って、みんなこうなんでしょう?そう私がこぼしたとき、「さつきのそれはちょっと変」と指摘してくれたのもうれしかった。彼女に言わなかったら、私はこれが当たり前だと思って耐え続ける選択をしただろうから。
…まぁ結局、いま耐え続けているんだけど。
『私さ、SNS発見したかもしれない』
「え?玲奈さんの?」
『うん…多分そうだと思うのよね…ちょっと送るから見てみて』
スマホを耳から離し、イヤホンにつなげる。そのまま送られてきたアカウントをひらいた。
そこには、レイナ~モラハラ夫と離婚成立しました~と書かれたアカウント。つぶやきは1年前で止まっていた。
「えっ、これ?」
『そう…さつきから聞いた旦那さんの離婚した時期とも一致するし、玲奈って名前も…。あと、姑さんに相当嫌がらせされてたみたいね。あと決定的なのが』
すぐにスクリーンショットが送られてくる。
『きょう弁護士を自宅に招いて夫と話し合いをしようと思ったら、弁護士が不倫相手だって夫にガチギレされて謎の修羅場でした。おかげで暴言&暴力を弁護士さんにその場で見てもらうことができたので、まぁよかったのかな?』
「これ…」
『旦那さんさ、似たようなこと言ってたよね』
「うん。ある日会社から帰ったら、嫁が不倫相手といたって…」
『あとこれ』
続いて送られてきたのは、離婚後の話だった。
『元夫、婚活パーティーで知り合った女性と結婚するそうです。姑が私の実家にわざわざ電話してきたらしい。そんな報告いらないんですけどって、私の母もうんざりしていた。奥さん何も知らないんだろうな…私みたいになる前に全力で逃げてほしい』
「わ、私が結婚した時期と被ってる…」
『ね?玲奈さんっぽくない?』
蓮から聞いた離婚理由もそもそも嘘だった。玲奈さんが悪いわけではなく、蓮の卑劣なモラハラと姑の嫁いびりが原因だったんだろう。
つまり、彼らは玲奈さんとの生活を全く反省せず、また私に同じことをしているのだ。
「なんで?人をいじめるのが楽しいの?」
『きっとさ、誰かを見下してバカにすることが快感っていうか…心地よいんじゃないかな。それが唯一自分たちの自信につながるっていうか。もともと自信のない人たちで、嫁をいじめることで自分らが強いって思い込んでるっていうか…』
「なにそれ。自分の欲求を満たすためだけに私が選ばれたってこと?」
『その可能性はあるよね』
許せない。怒りが体中を覆いつくした。
NEXT:2022年6月17日(金)更新予定
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- ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。