証拠について「慰謝料を払え」と言われ…
次に、事務職の女性(38歳)のエピソードです。
「夫の不倫が発覚し、離婚を決めました。
LINEでの不倫相手との会話をスクリーンショットで撮り、証拠にしたのですが、慰謝料の額で折り合いがつかず調停を申し立てました。
私は一人娘を連れて実家に戻っており、裁判所でも待機する部屋からフロアをわけてもらえたので顔を合わせることがなく助かりました。
問題は調停室での夫の主張で、私が提出したスクリーンショットについて『プライバシーの侵害だ』『勝手にスマートフォンの中を見られてショックだ、慰謝料を払え』と家とはまったく違うことを言い出したのです。
調停委員はそれぞれ50代くらいの男女ふたり、穏やかに話を聞いてくれて夫の話についても『それと不倫は関係ない』『自分のしたことについて反省するべき』と説得してくれたのですが、夫は頑として譲らず。
私はこの離婚調停とは別に婚姻費用分担請求の調停も申し立てており、これについても『実家にいるのだから金はかからないだろう』と払うことそのものを渋っていました。
婚姻費用分担請求については、裁判官から『法律で決まっているもので、妻がどこに住んでいようと関係なく払わなければいけない』と言われて算定表の金額に渋々同意していましたが、おそらく納得はしていなかったと思います。
それもあって慰謝料の支払いは嫌なのだろうなと察しはつくのですが、だからといってなしで済ませるわけにはいかず。
夫は調停委員の言葉に耳を貸さないようで、しまいには『慰謝料は相殺する』とまで言い出し、不成立を覚悟しました。
それを伝えられたとき、正直に言えば調停委員のふたりから『慰謝料は諦めたら』と言われるかも、と思ったのですが、女性の調停委員が『裁判になれば慰謝料の支払いは免れませんよと言いました』と口にしてびっくりしました。
調停委員はどちらの味方もしないと聞いていたけれど、筋の曲がったことは受け付けないのだなとわかって心強かったです。
結局この言葉が効いたのか、調停が不成立になれば訴訟を起こすと私が伝えたこともあり、夫は慰謝料の支払いを認めました。
夫はゴリ押しすれば私が諦めると思ったのかもしれませんが、調停委員のふたりが常識を持って説得を続けてくれて、本当に助かりました」
自身の不倫の罪から逃れたくて、このような主張をする人もいます。不当に入手した証拠について責められても、それと不倫や浮気の話は別。「慰謝料の相殺」など相手にとってだけ都合がいい主張は、しっかり拒否しましょう。
たとえば配偶者の不倫で不貞行為があったと確実に認められる場合、慰謝料の支払いを求められたら逃げることはできません。
離婚したければおかしな提案でものむべき、と勧めてくる調停委員もなかにはいますが、本当に納得のいかないことは我慢せずに伝えるのが自分のためといえます。
そのうえで、別の妥協案を一緒に探すのが調停の場と思いましょう。
また、婚姻費用のように法律で分担するべきと決まっているものでも支払いを拒否する人がいますが、それを説明してもらえるのも調停のメリットです。
調停なら確実に支払いを決められ、取り決めを履行されなかったときでも裁判所を通して給与の差し押さえなどができます。
調停のよさを最大限に活かすためにも、臨むときは自分の意思を固め、冷静に判断する姿勢を持ちたいですね。
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