仲直りの方法
「っていうかさ、スマホの中身ってめちゃくちゃプライベートじゃない?」
「うん、そうだね。でも見たくて見たわけじゃないよ、指がすべって開いちゃったの。仕方ないでしょ?」
冷め始めたパスタをフォークに巻き、ドラマを数分巻き戻す。
「嫌な思いさせたなら、ごめんなさい」
わざとじゃなかったとはいえ申し訳ないな、そう感じて謝る。ふと悠馬の顔を見ると、なぜか私のスマホを持っていた。
「え?なんで私のスマホ持ってるの?」
「俺にもスマホの閲覧履歴、見せてよ。それで許す」
「はぁ?許すってなにそれ、私わざとじゃないんだけど!」
「そんなに嫌がるってことは、見られたら困るものでもあるわけ?」
ニヤニヤと笑う悠馬の顔が憎たらしくて仕方がない。どうして私が追いつめられる状況になるんだ。
「困るものなんてないけど、悠馬は人にされて嫌なことを私にもするの?」
「そういうわけじゃないけど、仲直りの手段としてさ」
「やめてよ、そんな仲直りの仕方嫌だ。浮気されたら浮気し返すって言ってるのと同じだよ?」
「それはおかしいと思うけど、レベルが違うじゃん」
「はぁ…?」
悠馬の考えがちっとも理解できない。こんな人とこの先も一緒に暮らしていくのだろうかと一瞬不安がよぎった。
私が断るのも聞かず、悠馬はスマホのパスワードを解除する。
そもそもパスワードを教えてる時点で、やましいことなんてあるわけないって気づいてよと心の中で思った。でももう、いっそのことどうにでもなれと思った。
「なにこれ」
インターネットにつなげた途端、悠馬が唖然とした声を出す。さっきまでのニヤニヤとした顔が一転、不安に染まっていた。
カマでもかけられてるのだろうか、やましいページなんて見てないはず。
「はぁ…なに?どれ?」
大げさにため息をついて右手を差し出すと、悠馬はページが表示されたままの私のスマホを恐る恐る差し出してきた。そこには「レンタル恋人」の文字。
一瞬、どきんと心臓が鳴った。
「レンタル恋人って、何」
「恋人をレンタルするサービスだけど」
「いや、それは知ってるけど。なんで見てんの?俺以外の男性とデートしようとしてるの?」
「してないけど」
「じゃあなんで、そんなサイト見てるの?」
レンタル恋人のトップページに表示された男性と女性が、にこやかに私に笑いかけてくる。