購入から3年後、ライフステージの変化
「え、時短?」
タワーマンションを買ってから3年後、私たちは双子を授かった。さらに産後1年で復職したのだが、フルタイムで激務の私たちは、子どもとの時間を全然作ることができずにいた。
「うん…保育園のお世話になれるし家事代行の人が来てくれるとは言っても、子どもとの時間ももう少し増やしたいなぁと思って」
「でも、そしたらローンはどうするの?収入減るから払えなくなるでしょ」
「それはまぁ…節約したら大丈夫じゃないかな」
「そっか…じゃあまぁ、やってみよっか」
時短勤務になったぐらいで生活が苦しくなるわけないと思っていた。収入はタワマン購入時からさらに上がっている。苦しいことなど何もないと思っていた。少し、外食を控えればいいだけ。
「可愛い~!これください!」
子どもとの時間が増えた私は、子どもにお金をかけるのが楽しくて仕方なくなっていた。ハイブランドばかり着せ、習い事にも通わせた。
「カードで払います」
いつものようにクレジットカードを出す。しばらくすると店員が、申し訳なさそうな顔で告げてきた。
「お客様、こちらのカードご利用できないようなのですが…」
「え?そんなはずは…じゃあこっち」
「…こちらも利用できないみたいで」
「ええ?じゃあ現金で払います…」
知らないうちにクレジットカードが利用停止されていた。なぜだろうと思って家に帰ってから調べると、先月の引き落としが残高不足でされていない。
「そんなまさか」
慌てて口座の残高を見ると、お金が全く入っていなかった。
ふと、先月の行動を思い出す。特にいつもと変わったことなんてないはずなのに…そう考えて気づいた。時短勤務になって給料が少し減ったのに、それでも前と変わらないお金の使い方をしている。
これはいけないと思って貯金通帳を開くと、貯金残高がたったの5万円しかなかった。
そういえばタワーマンションを買ってから家具をそろえたりして貯金をする余裕なんてなかった。それに、出産のときは個室にお祝い膳がある評判のよい産院を使って費用が高かったし、育児のお金も毎月かかる。
「これじゃダメだな…貯金しないと」
家計簿を見つめて考え込んでいる私に、突然祐樹がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「真由美、俺さぁ…車買っちゃった」
「はぁ?」
「ほら、子どもも生まれたからもう少し大きい車がほしいなって話してたところだっただろ?」
「だからって相談してくれてもいいでしょ!いくらだったの?」
「んーナイショ!ローンで買ったよ。月4万円」
思わず頭を抱える。支払いが厳しくて困ってるのに、支払うものがさらに増えるなんて。
とりあえずカードの残高を支払わなくちゃと、どうにか頭を悩ませ、私は身に着けていない宝石たちを売った。これでまた気をつければ、元通りになるよね。
次の月、またカードの支払いができなかった。
「教育費が高いのかな…そんなに買い物してるつもりはないんだけど…」
何にお金を支払っているかわからない。クレジットカードの明細を見て、私はビクビクしている。またカードが止められてしまう。買いたいものは山ほどあるのに。
「洋服代とかが高いのかな。でも可愛いから我慢したくないし…」
マンションのローン、車のローン、教育資金、保険に投資、家事代行や食費、旅行代に服飾費、趣味のお金に習い事…。
「全部必要資金じゃない…」
仕方なく、自分の服飾費を削る。それでなんとか、毎月の生活に余裕が出てきた。それでも厳しいことに変わりはなかった。
子どもが大きくなるにつれて必要なお金も増えていく。出費も増えていく。そんなとき、私たちの人生を変える1本の電話が鳴った。