頼れる義母との同居生活は至って順調だった。息子が生まれ、心強い義母の支えと共に毎日を楽しく過ごしていく主人公の香織。
しかし義母の行動は、日に日に「優しいおばあちゃん」の常識を超えていくのだった。
第1話
- 登場人物
- 香織:この物語の主人公
- 優一:香織の夫
- 義母:香織たちと同居している優一の母
- 恵介:香織と優一の息子
- ※登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
頼れるお義母さん

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お義父さんが亡くなってから、お義母さんと同居するのが決まったのはごく自然な流れだった。
「香織さん、いまタクシー呼んだからね、大丈夫よ。安心して」
「はい、すみません…」
最初は嫌だった。嫁姑の仲が絶対悪くなると思ったから。ネットでよく見る確執が生まれると思ったから。でも、所詮ネットの話だった。実際は違ったのだ。
「優一には電話しておいたから。香織さんのお母さんにも連絡しておいたからね」
「ありがとうございます…」
「大丈夫?また波がきたのかな。腰さするね、大丈夫。ゆっくり呼吸するのよ…」
「はい…」
私のお義母さんは、私を実の娘のようにかわいがり、大事にしてくれた。
あの日、忘れもしない水曜日の16:00。
自宅で破水した私が不安にならないよう病院に付き添い、出産までびっしりサポートしてくれたのも、夫ではなく実母でもなく、お義母さんだった。
「香織さん、頑張って!あと少しよ」
安産だったんだと思う。病院についてから、わずか3時間で私は分娩台に乗っていた。あまりにも早くて夫も実母も間に合わなかった。
もしお義母さんがいなければ…1人でこの痛みを耐えていたのだろうか。
助産師さんたちが声をかけてくれるなかで、誰よりも私の心を支えてくれたのも、まぎれもなくお義母さんだった。
そして20:53。無事に息子、恵介を出産した。名前は義母がつけてくれた。
懸命に私を支えてくれたお義母さんに、私はただただ感謝をする。
「お義母さん、本当にありがとうございます」
出産後、呆然と天井のライトを眺めながら私は呟く。夫は結局間に合わなかった。なんとか出産直前に実母が分娩室までたどり着いたが、立ち合おうとしたときにはもう息子が生まれていた。
「お義母さんがいなかったら、くじけてたかもしれないです」
「そんなことないわよ、母は強いのよ。本当にお疲れさま、よく頑張ったわね」
汗でしっとりと濡れた私の髪の毛をお義母さんは優しくタオルで拭いてくれる。そんな様子を見て、実母が「娘のようにかわいがってくださって本当にありがとうございます」と頭を下げていたのを私はいつまでも忘れないだろう。
出産後、私は義母の心強いサポートの元初めての子育てをスタートさせた。実母も「お義母さんがいるなら安心だわ」と言ってくれている。
何も困ることなんてない、順調な子育て生活が始まると思っていた。