終わりを告げる時間
「…離婚?」
3週間ぶりに帰った我が家は、掃除もされておらず荒れ果てていた。
キッチンにはカップ麺やお弁当の容器が散乱し、閉め切ったカーテンが部屋をどんよりと暗くしている。
「そう。離婚しましょう」
私は両親と共に家に帰ってきていた。目の前には夫が座っていて、その両サイドには義姉と義弟がいる。
状況を理解していないはずの凜も、大人しく私の膝に座っていた。
夫はテーブルのうえに置かれた離婚届を見つめて固まっている。
「俊くん、これ以上君に娘も孫も任せられない。私たちはもう君を信じられない」
父が静かにつぶやいた。
「やば、離婚とか大げさすぎ…沙耶ちゃん、なんか誤解してない?事実を盛って伝えてるでしょ、大丈夫?」
「沙耶さんのお父さん、俺はただ居候させてもらってるだけで生活費も入れてますし、何の迷惑もかけてないんですよ?」
義姉と大和は相変わらず、自分のしたことの大きさをわかっていないようだった。
「自分の子どもを他人に預け、熱が出たら人のせいにし、深夜にもかかわらず怒鳴り散らす…常識知らずな女性だとお伺いしました」
母が静かに義姉に告げる。
「そしてあなたは、私の娘を脅したんですよね。男性に脅されて、恐怖を感じない女性がいると思いますか?」
「だから誤解ですって、冗談も通じないんですか」
「冗談で済むと思っているのなら、もう一度小学校からやり直した方がいいですよ」
母は冷たく、大和の目をじっと見た。
「それと…俊くん。あなたは娘のSOSをすべて無視したそうですね」
「無視って…俺は家族だから支えあうのが当たり前だと言っただけです…」
「では沙耶を支えましたか?沙耶の気持ちに寄り添おうとしましたか?沙耶の悲痛な叫びをまともに受け止めましたか?」
「それは…」
「あなたにとって、沙耶は家族じゃないようですね」
母の冷たい声が、しんと静まったリビングに響く。俊はようやく事の重大さを理解したようで、何か言おうと口をパクパクさせていた。
「俺、ちょっと…頭冷やしてくる…」
俊はそっと立ち上がり、5分ほど席を外した。戻ってきた俊が連れてきたのは、なんと義姉の夫だった。
義姉の夫は龍之介を抱きかかえ、呆然とした顔でリビングに突っ立っている。