認知症による収集癖にはどう対応するのがいい?
認知症の人による収集癖への対応として大切なのは、本人の集める行為を否定したり、「集めたものはゴミだ」などと言わないことです。
以前、私も不要なものばかりカバンのなかにしまい込む母に対して、「そんなゴミみたいなもの持ち帰ってどうするの!」「カバンのなかがゴミだらけだよ!」と否定するような言葉をかけていました。
しかし、否定するような言い方をすると、母は、「ゴミじゃないわよ!」「後で使うからいいのよ!」と怒りだしてしまい、かえって逆効果なのです。
認知症の人が集めたものは、他人からするとゴミのようなものに見えるかもしれませんが、本人にとっては、ゴミではなく、必要と思っているから集めているのです。それを否定すると、かえって意固地になり、逆効果になってしまいます。
しかし、いくら本人にとって必要なものであっても、不衛生なものや危険なものであった場合は、対策が必要になります。
私の母の場合、使用済みのティッシュやペーパーナプキンなど不衛生なものを集めることが多いので、次のような対応をしています。
使用済みのものを新しいものに交換することです。カバンのなかに使用済みのティッシュが入っていたら、「このティッシュは使用済みだから新品のものに交換しよう」と伝えています。
不衛生なものを集める場合の対策としては、「処分する」のではなく、「新しいものに交換する」ように対応するのがよいでしょう。
次に集めたものに問題がない場合(不衛生ではないもの)どのように対応すればよいのかお伝えします。
まずは、集めたものがいまどのくらいあるのか一目でわかるようにするのがよいでしょう。これまで収集してきたものを整理して特定の場所に置くことで、「もう充分にある」と理解し、収集へのこだわりが薄れる場合があります。
また、対応のひとつとして不安な気持ちを和らげたり、安心できる環境を整えることも大切です。
不安や孤独感、認めてもらいたい気持ちが収集癖の原因となっていることも考えられるからです。
認知症になると、熱中できるような趣味や自信がもてることが少なくなります。その結果、不安な気持ちを満たすために、ものを収集するようになるのです。
認知症の人が自信がもてることや好きな活動が見つかることで、不安や孤独感が和らぎ、収集癖がおさまる場合があります。
収集癖につながる不安感を増大させないように認知症の人に寄り添うことや、コミュニケーションをとることも大切なのです。
私の母も、実家で一人で生活をするなかで芽生えた不安な気持ちが収集癖へとつながったのかもしれません。
回収や処分は無理に行わず慎重に!
認知症の人が集めたものが、不衛生なもの、危険なもの、他人のものでない限り、基本的に無理に回収や処分するのはNGです。
勝手に処分されたことに気づくと、もの盗られ妄想や被害妄想につながる可能性があるからです。
どうしても処分が必要な場合は、先ほども述べたように代わりのものを用意する、本人が普段からあまり気を配っていない場所から少しずつ整理するなど工夫が必要です。
また、「処分する」「捨てる」というような言い方はせず、「整理する」と説明して本人の許可を得てから行うようにするとよいでしょう。
収集癖の理由や解決方法は、人それぞれです。
介護する家族にとって、認知症の収集癖はとても厄介な問題に思えてくるかもしれません。しかし、収集癖には本人なりの理由があります。
本人の行動をよく観察し、どのような時にものを集めるのか、何か集めるきっかけがあるのか理由を探ることも大切です。
ものを集めたくなっている理由がある程度わかってくれば、改善できる方法がみえてくるかもしれません。
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