虐待に「終わり」なんてものはない
現在29歳になったぼくは、法律婚をして実家を出ている。父とはコロナ禍ということもあり、ここ1年ほど顔を合わせていなかったが、つい最近事実上の絶縁宣言をした。もう二度と顔を合わせるつもりはないし、連絡を取るつもりもない。
しかし現在もまだ、後遺症に苦しめられている。不意に訪れるフラッシュバックに朝まで嘔吐したり、悪夢にうなされて真夜中に飛び起きることもある。
長年患っていたうつ病はほぼ寛解(かんかい)状態にあるが、それでも薬なしでは一睡もできやしない。メンタルクリニックにも通院しているし、定期的にカウンセリングを受診している。
もう、10年だ。父の折檻(せっかん)が終わってから今年で10年になる。虐待というのは「親から離れたらそれでおしまい」なんていうほど安易で単純なものじゃない。その後何年も、下手したら一生、後遺症に苦しめられるし、そういう意味では虐待に「終わり」なんてものはないのだ。
もうだれひとりとして、ぼくみたいな思いを味わってほしくない。こんな哀しさを背負いながら生きていくひとを、もうひとりもこの世に生み出したくない。
本当に伝えたいのは、ぼく自身の痛みなんかじゃない。いまなお苦しんでいる教育虐待サバイバーであるぼくが、それでもこうやって生き延びて、ものを書いて食っている、現在の姿そのものだ。
いままさに渦中にいるひと、家族から暴力を受けているひとや、子どもに手を挙げてしまっているひと。身近にそういうひとがいながら、どうすべきかわからず途方に暮れているひと。被虐待児及び虐待サバイバーの支援に、携わっているひと。
今回紹介したぼくのこの話が、傷つき戸惑い震えているすべてのひとの、なにがしかの灯火になりますように。
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