認知症の人が怒りっぽくなったとき、ベストな対応方法は?
では、認知症の人が「怒っている」ときには、どのような対応をすればいいのでしょうか。
認知症の人が「怒っている」ときはまず、本人の言っていることに耳を傾けることが大切です。
このとき、「なぜ怒っているのか」などの質問はなるべくしない方がよいでしょう。
なぜなら、怒っている本人もその質問に対してうまく説明できないことで、さらに怒りが助長してしまうことがあるからです。
私の母は、以前自分の勝手な妄想から怒ることがよくありました。
しかも怒っている理由がうまく説明できずに、怒りがおさまらなかったことも多かったのです。
まだ母が高齢者住宅に入居する前の話ですが、突然母から次のような電話がかかってきました。
「もう、家(実家)に帰ってこなくていいから!」しかも、かなり怒っている様子でした。
私は、母からの突然の電話にびっくりして「なんで急にそんなこと言うの?」「何かあったの?」と聞きました。
すると、「突然、ヘルパーさんがきたのよ!」と。もう少し、怒っている理由を詳しく聞き出そうとしても、母はうまく説明できない様子。
「とにかく、ヘルパーさんが来て、あなたがもう面倒見れなくなったと言ってたのよ!」とさらに怒りがヒートアップしてしまったのです。
母は、怒っている理由をうまく説明できない自分に腹立たしく、それに苛立ち、さらに怒りが増してしまったのです。
当時の私は、「そんなこと言ってないよ!」「何かの勘違いじゃない!?」と母の言動に対して否定するような言い方をしていました。
実際に母から電話がかかってきたときは、ヘルパー支援は受けておらず、週1回のデイサービスしか利用していませんでした。
この話は、完全に母の妄想だったのですが、怒りをさらに引き立ててしまう可能性があるため、認知症の人との会話のなかでは怒っている理由を聞くことや否定はなるべくしない方がよいです。
原因がわからない認知症の人の怒りの対応として最も重要なのは、次のようなこと。
- 否定しない
- 理由を深く聞こうとしない
- 余計なことは言わない
特に母のような妄想に対する怒りの場合、完全に本人の思い込みによるものなので、否定しても訂正しても本人の思い込みがかわることはありません。むしろ否定すればするほど、本人の怒りは増してしまいます。
重要なのは、本人の不安、他者への怒りなどの感情に共感すること。それでも、怒りがおさまらないというときは、少し距離を置き、落ち着くまで様子を見ることも大切です。
そして症状が進行し、暴言や暴力を振るうようになってしまったら、対処法として薬物療法があります。
現在、母は以前より高齢者住宅のヘルパーさんに対して怒りやすくなったことから、精神を安定させる薬が処方されています。私の母は、薬を処方されてから、少し落ち着いてきたように感じます。
人によっては、薬だけで症状が完全に改善されるわけではなく、副作用が起こる場合もあるので、医師と相談して様子を見ながら服用させるのがよいでしょう。
「共感すること」が大切
家族が認知症になり、突然人格が変わったように怒りやすくなると、どう対応してよいか不安になりますよね。
認知症の人が怒りっぽくなるのは、感情のコントロールができなくなるため、期待通りにいかない・価値観を否定されるなど自分の思うように物事が進まないというストレスが原因だと考えられます。
認知症のほかの症状でも言えることですが、認知症の人と接するときは、本人の不安、他者への怒りなどの感情に共感することが大切です。
そして、認知症の症状がさらに進行し、暴言がひどくなった場合は薬物療法を選択肢のひとつとして考えてみるのもよいでしょう。
いずれの場合も一人で抱え込まずに、医師やケアマネージャーなどに相談するのがおすすめです。私も何か一人では解決できないことがあるとケアマネージャーさんに相談するようにしています。
この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです。
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