そこに住んで長くなると、避けられないのがご近所さんたちとのお付き合い。
いいことばかりならうれしいけれど、負担が大きかったりストレスがあったりする関わり方だと、悩みますよね。
なかでも「おすそ分け」は、好意だとわかるからこそ断るのが難しく、受け取るうちに頻度も量も増えていくのがよくあるパターンです。
いつも大量の野菜を持ってくるご近所さんに悩むある女性には、どんなトラブルがあったのでしょうか。
気持ちはうれしいけれど…
静かな住宅街に家を構えて15年になるというサキさん(仮名/42歳)は、近所のご夫婦が持ってくる野菜のおすそ分けに困っていました。
「50代のおふたりで、家の近くに大きな畑があってそこで野菜を作っているのは知っていました。近いといってもすぐそこじゃなくて、普段は道端で出会ったときに挨拶をする程度だったのですが、子どもが小学生になって通学が始まってからですね、『毎日元気だね』と声をかけてくださることが増えて、それは素直にうれしかったです」
近くのスーパーでばったり顔を合わせたとき、子どもの話から家族構成などが話題になったと覚えているサキさんは、おすそ分けが始まったのはこれがきっかけだろうと思っています。
「ある日の夕方、奥さんがうちを尋ねてきて『うちの畑で取れたものだけど、よかったら』ってトマトやきゅうりを渡してくださいました。そのときは小さな袋ひとつの量で、ありがたいなと思ったししっかりお礼も言って、うちも何かお届けできるものはないかと考えましたね」
ところが、お返しを用意する間もなくふたたび尋ねてきた奥さんは、今度はキャベツを「皆さんで食べてね」とサキさんの手に渡します。
そのときもきちんと感謝の気持ちを伝えたサキさんでしたが、奥さんの訪問はその後も続き、さすがに持て余すようになりました。
「夫が、『こう何度もいただくのでは申し訳ないし、うちも困る。お返しを贈ってもういいですとやんわりお断りするのがいいのでは』と言い出して。私もそう思ったし、デパートでお礼の品を購入してお宅に伺いました」
サキさんが用意したブランドもののタオルを受け取ってくれたご夫妻でしたが、「おいしいしとてもありがたいのですが、これ以上ご好意に甘えるのは申し訳ないです」と遠回しにおすそ分けを断るサキさんに対し、「うちは趣味でやっている畑だしたくさんできるから、気にしないで」と軽い調子で流したそうです。
その後も奥さんがサキさんの家を尋ねることは続き、その関わりがサキさんたちには少しずつ負担になってきました。
エスカレートする「おすそ分け」
「本当に困ったのは、夏場にオクラなども持ってきてくださるのですが、明らかに傷んでいるものとかあって。驚いていたら『きょうのうちに食べてしまえば大丈夫よ』って奥さんは平気で言うんですよね。分けてくださるお気持ちは本当にありがたいけれど、そんなものまで持ってこられてもうちもメニューを考え直さないといけないから大変だし、申し訳ないと思いながらこっそり処分するときもありましたね…」
ため息をついてそう話すサキさんは、ほかにも「4人家族なのに10本以上のきゅうりやピーマン」「表の皮が腐りかけている大量のたまねぎ」なども持ってこられ、感謝の気持ちを超えて迷惑とはっきり感じるようになったそうです。
「きょう買い物に行ったばかりでとか、ほかのおうちからいただいたものがあってとか、その度に断るのですが、『近くの人に分けてね』と奥さんはまったく気にしない様子で。
お隣さんに少し持っていったこともあるのですが、そう何回も渡されても向こうも困るじゃないですか。分ける人なんていないし正直に言えば手間だし、ストレスでしたね」
そんなサキさんの困惑を意に介さないように、奥さんはその後も大量の野菜を持ってきます。
夫から「うちを余った野菜の処分先にでもしているのではないか」と言われ何となく合点がいったサキさんは、あるとききっぱりと「我が家も配る先はないし、いただいても消費するのが大変なので、そろそろおすそ分けは終わりにしていただきたいです」と奥さんにお伝えしたそうです。