「いまから会える?」と、急に誘われた経験はありますか?
今回は急な誘いに乗って行ってみたら…驚きの理由だった!という5人のエピソードを短編形式でご紹介。
ほっこりするような理由から、とんでもない理由まで、ぜひじっくりとご覧ください。
「泣きながら呼ばれた夜中の23時」雄大さん(仮名/25歳)
金曜日の夜、23時。缶ビールを2缶開け、撮りためていたドラマを見て、そろそろもう1缶開けちゃうかぁ…なんて思っていたとき、スマホが突然振動する。
誰からのメッセージだろうと思ってみてみると、大学時代の後輩。
「急にすみません、手伝ってほしいことがあるのですが、いまからうちに来れませんか?お礼はします、冷蔵庫にあるもの何でも食べていいです!お酒もあります!」
家が近かったこともあり、大学時代はよく遊んでいたのだが、ここ半年は会っていなかった。
なんかあればいつでも頼れよと言っていたものの、こうして急に頼みごとをされるのは初めてだった。
頼ってくれたことがちょっぴりうれしいのと、そんな急に呼びだすなんていったいどうしたんだという不安とが入り混じりつつ、冷蔵庫に余っていた缶ビールを2缶バッグに入れて、走って3分の後輩の家に向かう。
インターホンを押すと、すぐに半泣きの後輩が出てきた。
「先輩、すみません!本棚を組み立てるの、手伝ってください!」
どういうことだと思って部屋に入ると、そこには中途半端に組み立てられた大きな本棚が鎮座している。
一人でも行けるだろうと思ってネットで注文したものの、「2人で組み立ててください」と書いており、それでもできるはずだと思って進めたが、どうしてもできない箇所があるんだそう。
「ほかに頼れる人が先輩しかいなくて…」
半泣きの後輩を何とかなだめ、俺は後輩と一緒に、持ってきたビールを飲みながら本棚を組み立てはじめた。
後輩が「おかわりありますから!」と、冷蔵庫から日本酒を出してきたときには、「そんなん飲んだら、もう組み立てできなくなるから」と笑ってしまった。
そうして完成したのは、0時半を少し過ぎたころ。
「まじ助かりました!」
と言って頭を下げながら、後輩が「お礼に」と、得意のチャーハンを作ってくれた。
急な誘いに最初は驚いたものの、後輩の笑顔と、おいしいチャーハンが食べれたから、手伝えてよかったなと思う。
何より、ピンチのときに俺を思い出してくれたことがうれしくて、この呼び出しをきっかけに、俺たちはまた頻繁に会うようになった。
「まさかの呼び出しに大満足」恵子さん(仮名/33歳)
あれはある夏の土曜日、夜18時。子どもたちと1日中プールで遊び、私も夫もぐったりして家に帰宅したときのことだった。
夜ご飯は簡単にそうめんに…と思っていたものの、そうめんをゆでるのすら面倒に感じるほど、とにかく疲労困憊状態。
5歳の息子と3歳の娘は、疲れているはずなのにすこぶる元気。相手もしなきゃいけないし、ごはんも作らなきゃいけないし…と思っていたとき、スマホが鳴った。
画面に表示されたのは、幼稚園のママ友・洋子さんの名前。
「あ、もしもし…恵子さん?こんな時間にごめんね、いま忙しかった?」
「ううん。プールから帰ってきてぐったりしてたところ~どうしたの?」
「実はね、夜ご飯のおかずを作りすぎちゃったの。急で悪いんだけど…もしよかったらうちに来ない?」
「…え!?いいの!?」
思いもよらない急な呼び出しに、二つ返事でOKを出す。子どもたちや夫も連れて行っていいかと聞くと、人は多いほうがいいとのこと。
理由は後で聞くとして、喜んで一家で向かった。
すると、そこには私たちのほかにも、幼稚園のお友達が2組。みんなも急に呼ばれ、二つ返事で足を運んだそうだ。
そしてテーブルのうえには、何人前!?というくらい大量のおかずがどっさり。
唐揚げやエビフライなどの揚げ物はもちろん、サラダにサイドメニュー、デザート、おにぎりに、パスタまである。
洋子さんオリジナルのレシピなのだろうか、見た目も華やかで、見たことないようなものもあった。
「すっごいありがたいんだけど、こんなにたくさんの量、どうしたの?」
「実は私ね、料理ブロガーをやってて…今度本を出すの。その撮影できょうおかずを作ったんだけど、スタッフさんたちも食べきれないくらい余っちゃって、困ってたんだ」
知らなかった洋子さんの一面に驚きつつも、「そんなことならいつでも食べるから呼んで!」なんて言っちゃって、ありがたくいただくことに。
どれもこれも本当においしくてびっくり。
詳しく聞けば、私も参考にしたことのあるお料理レシピを考えた人だった。恥ずかしくって、なかなか言えなかったらしい。
お腹を空かせた子どもたちも、私も、私の夫も、大満足の晩御飯になった。
もちろんお礼に洗い物をさせてもらい、後日おいしいフルーツを持って改めてお礼に行った。
「この前は急に誘ってごめんね。もしよかったら…次は事前に連絡するから、また呼んでもいい?」
「もちろんだよ!いつでも呼んでね!」
こんな急なお誘いなら、いつでも大歓迎である。
「悪ふざけと思いきや…」詩音さん(仮名/23歳)
当時の大学の先輩で、気になっていた松本先輩に、バイト帰りの私は突然呼び出された。
ちょうどバイトを終えた21時だった。
松本先輩からの着信にちょっとドキドキしながら、満を持して電話に出ると、電話口の向こうから賑やかな音楽…そしてほかのお客さんの声。
「あ、詩音ちゃん?急にごめんね!松本です!いまどこ?」
「先輩、お疲れさまです。いまバイト終わったとこですけど…どうしました?」
「あーいや、あのさぁ」
ここで先輩の周りから、数人の男性や女性の笑い声が聞こえる。
あー…先輩が友達同士で、居酒屋で飲んでて、盛り上がっちゃってる感じかな。ちょっと、めんどくさいかも。
「いまから来れない?一緒に飲みたいなと思って」
「先輩、酔ってます?」
「いやぁ!そんなことないよ!ただ詩音ちゃんと飲みたいのよ、お願い!奢るから!」
気になる先輩に誘われて、うれしさ半分。悪ふざけかなんかなんだろうなと思って、悲しさ半分。とはいえ女の先輩もいるみたいだし、変なことはされないだろうから、行ってみるか。
バイト先から居酒屋までは歩いて15分ほど。私は居酒屋に向かった。
先輩の態度次第では、なんか、恋心も冷めちゃったりして。私、都合のいい後輩って思われてたら嫌だなぁ。
居酒屋に到着して先輩の席に行くと、顔を真っ赤にした先輩の友人たちと、いつも通りだけどどこか緊張した様子の先輩。あれ?先輩は…素面?
「先輩、どうしたんですか急に呼び出して。ちゃんとおごってもらいますからね~、何飲もうかな」
「あ、あのさ詩音ちゃん。飲む前に、ちょっと聞いてほしいことがあって」
なんだろう?と思いながら、ドリンクメニュー片手に先輩の顔を見る。先輩の手元にはウーロン茶。
さっきまで賑やかにしていた周りの人も、私と先輩を見つめて、急に黙りだすし…。
「こんなところで言うのは間違ってると思うんだけど、どうしても緊張しちゃって。それで、この場の勢いを借りないと、もう言えないなって思って。本当、詩音ちゃんには幻滅されちゃってるかもしれないけど、でも、許してほしくて…」
なんだか早口になる先輩。様子がおかしい。一体全体どうしたの?
「俺、詩音ちゃんのこと、好きです!」
その一瞬、居酒屋の音楽も、ほかのお客さんの声も、何も聞こえなくなったように感じた。
先輩が顔を真っ赤にしながら私の顔を見つめていて、周りの友人たちは、「お願いします」のポーズで私を見ていて。
え…私、いま告白された?
「わ、私なんかでいいんですか?」
「詩音ちゃんがいいの。ずっと好きで…」
「私も、ずっと先輩が好きでした」
「わぁぁ」という大歓声と、「よかったなぁ!」と声をかけられ泣き出す先輩。「びっくりしたよね」「驚いたよね」と女の先輩。
何この急な誘い。断らなくてよかった。っていうか、恋が実っちゃったじゃん。忘れられない、急な誘いのお話です。
「昼間のカラオケに呼ばれて」誠二さん(仮名/24歳)
日曜日の昼14時。きょうは何にもやることがないし、どうしようかな…なんてダラダラスマホを見ていたときのこと、高校時代の友達から突然電話がかかって来た。
「頼む、いまからカラオケに来れないか!?緊急事態なんだよ!」
いつもなら、急に呼ぶなんて失礼だろと言うのだが、緊急事態と言われちゃそんなことも言ってられない。パッと服を着替えて外に出る。
カラオケと言われたのが少し気になったが、とにかくなにかピンチなんだろう。
カラオケボックスについて、「どうしたんだよ!」と勢いよく部屋に入ると、そこには高校のバスケ部で一緒だった友人たちが5人、神妙な面持ちで座っていた。
「誠二、待ってたよ。ちょっと一曲歌ってくれないか」
「…は?」
「俺たちいま、カラオケ代金をかけた採点チームバトルをしててさ、でも途中で1人帰っちゃって。俺のチームが2人になっちゃったんだよ。もう1人いないと合計点数で競えないだろ?だから、歌ってくれよ」
「何言ってんの?」
訳のわからないお願いに、俺は固まってしまった。っていうかそれ、もしかして俺もバトルに強制参加?
「いや、お前はお金負担しなくていいから、俺たちが負けたら先に帰ったやつにちゃんと後から徴収するから」
「…まぁわかったけど、俺何点とればいいわけ?」
「…95点」
想像以上の高得点を出さなければいけない事態に震えあがる。
カラオケなんて何年ぶりだろう?高校以来、行ってないかもしれない…。
震える手でマイクを手に取り、俺は高校時代の十八番だった、レミオロメンの『粉雪』をいれた。
暑い夏の昼下がり、全力の粉雪がカラオケボックス内に響いた。
点数は95.67点。
チームの勝利に貢献できた俺は、そのあとみんなと一緒にボーリングにまでいき、急なお誘いだったにもかかわらず、大満足の日曜日を過ごした。こんな誘いなら、悪くないかもな。
「もう二度と誘いには乗らないと誓ったあの日」凜さん(仮名/27歳)
20時45分。元カレからの急な誘い。まだ彼を心のどこかで引きずっていた私は、電話口で少し切なそうにしている彼の声を聴き、すぐに彼に会うのを承諾した。
約束場所は、よく2人で足を運んだ、駅前の個室居酒屋。
気合を入れたのがバレないように、服装はとことんカジュアルに。でも、可愛いって思われたくて、化粧も髪の毛もきちんとセットした。
「どうしたの、急に…何かあった?」
「…こんなこと、凜にしか言えなくって。俺、失恋したんだよね」
もしかしたら、もしかするかもなんて、ちょっぴり復縁の希望を抱いていた私の心には、この瞬間に大きなひびが入ったんだと思う。
「失恋?あー…振られたってこと?」
「うん。付き合ってた子にさ、浮気されて。1人でいるのがさみしくて、凜なら、そばにいてくれるかなって」
それって、私を都合よく扱いたいってことだよね。
「凜のこの後の予定って、ある?」
ほらきた。ああ、来なきゃよかった。ちょっとでも可愛いって思われようだなんて、メイクしたあのときの自分がバカバカしい。
「あー…この後は、ちょっと、予定が」
「予定ってなに?」
実は何もない。何もないけど、予定がないなんて言いたくない。強引に誘われるに決まってる。
「私さ、彼氏できたんだよね」
大ウソ。でも、本当に腹が立ったので、嘘をついてもまぁいいかと思った。
「あ、そうなんだ。え、これいま、来て大丈夫な感じ?」
「うん。元カレに呼ばれたってちゃんと連絡したし、1時間で帰ってきてねって言われてるし。なんなら、近くまで迎えに来るって」
「あーへぇ、そっか。なんか悪いね。じゃあちょっと、愚痴聞いてもらって飲んで、解散って感じかな。…何飲む?」
この後何もできないと知って、あからさまにショックを受けたような元カレの表情。
もう二度と、元カレの急な誘いになんて乗らない。そう誓った夜だった。
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