「なかったこと」にしていい場合
ただし例外はあります。いじめや配偶者からのDV、親からの過干渉や虐待など、自分ではコントロールできない問題の場合は、「自分でどうにかした」という記憶に書き換えるのは、無理があります。
そういう場合は、いじめの記憶を「クラスの友だちと仲よく遊んでいる記憶」に書き換えるなど、嫌な出来事をなかったことにしても構いません。自分の気持ちが1番スッキリする記憶に書き換えましょう。
また、トラウマの対処法を一度行ったからといって、嫌な記憶をまったく思い出さなくなるわけではありません。思い出すたびに記憶を書き換えるようにしてみてくださいね。すると、いつからか嫌な出来事を思い出さなくなったり、思い出してもストーリーが変わっていて、嫌な感情が伴わなくなったりします。
「トラウマの対処法」の効能
嫌な出来事があって、そのとき嫌な気持ちが生まれるのは当然のこと。けれどもその感情もいつかは流れ去っていきます。それなのに、終わったはずの過去の出来事にいつまでも苦しめられる人が大勢いるのはなぜでしょうか?
それは「予期不安」のせいです。予期不安とは、嫌な出来事に遭遇してそれが心の深い傷となり、「また同じようなことがあったらどうしよう?」と不安になってしまうことです。パニック障害の発作も、この予期不安が原因といわれています。
パニック障害とは、突然、恐怖や不安に襲われ、動悸、息切れ、窒息感、震え、めまいといったパニック発作を起こす不安障害のひとつです。一度パニックになると、また発作を起こすのではないかという「予期不安」によって、それが発作を誘発することにつながると考えられています。
トラウマの対処法は、この予期不安をなくす効果があります。過去の嫌な記憶を書き換えてしまうのですから当然です。予期不安がなくなれば、それに伴う嫌な感情もなくなります。
また、トラウマの対処法は、過去だけではなく、未来の不安を解消するのにも役立ちます。たとえば、「うまくいかなかったらどうしよう?」と考えてしまうとき。最初は「うまくいかなかったらどうなるか」と、最悪の場合をイメージします。次にその映像を巻き戻し、今度はうまくできた場合を思い描いて、イメージを上書きすればいいのです。
「うまくいかなかったら…」と思うたびに行えば、未来への不安は徐々に薄れていきます。ぜひ、試してみてくださいね!次回は、トラウマの対処法【理論編】についてお話ししたいと思います。
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