発達に問題があるのかも?
そのうち、息子はもしかしたら発達に遅れがあるのではないかと思い始めました。
ふだん接していて、知能の遅れや受け答えに問題を感じないけれど、とにかく周りのお友達と違いすぎる。
もし発達に問題があるのであれば、幼稚園も加配ができるところを選ばなくてはいけないと思い、慌てて療育センターに相談の電話をしました。
療育センターは問い合わせが殺到していてなかなか相談予約が取れないと言われましたが、「幼稚園選択のために必要だから」と事情を話すと、相談予約を早めに入れてくれました。
いまでこそ発達障害という言葉はわりとオープンに使われ始めたと思いますが、夫にそのことを話すと不満そう。
わたしは心配しすぎで、「発達障害って名前をつけて安心しようとしてるんじゃないの?」とまで言われて大ショック。
振り返ってみれば、たしかにほかのお友達と違うことがなぜだかわからず、誰かに答えを教えてほしかったのかなと思います。
もし発達障害なら、接し方や特性などを療育センターのサポートを受けられるのではという期待もありました。
けれどそこで普段の様子を話し、息子とも面談をしてもらいましたが「特に問題なし」という結果。
ハッキリと診断はしませんが、まだ小さいので今後を見て行かないとわからないというお話でした。療育でフォローが必要だというタイプのものではなかったのでしょう。
誰かしらに相談に乗ってもらいたいと思い、藁にもすがる思いで訪れた療育センターでしたが、そこでも「様子見」といわれ、いよいよ相談する相手がいなくなり、途方に暮れてしまいました。
もう1年待とう、と決めた日
多くの子は、幼稚園に年少から入園します。わたしの周りのママ友も、みんなそれぞれ年少から幼稚園に入れるつもりでいました。
わたしもそのつもりでたくさんの幼稚園を探しましたが、どうしても息子が楽しんで幼稚園に通う姿が想像できません。
けれど当時のわたしは、「入園が1年遅れると、周りから遅れを取ってしまう」と思い込んでいたので、幼稚園の入園を遅らせるのが怖かったのです。
どこの幼稚園でも、知らない場所と、子どもがたくさんいる場所が嫌いだと相談すると「最初はみんな泣くけど、すぐ慣れるから大丈夫ですよ」と言われましたが、拒否反応を示す息子を無理やり幼稚園に行かせる気になれず、「年少で入れなくちゃ遅れる」「でもいまはまだ早いかも」の狭間で揺れ続けていました。
そんなある日、広々とした園庭と素敵な森を持つ幼稚園に、息子と散歩がてら遊びに行きました。
この幼稚園はいつでも園庭開放をしていて、幼稚園が休みの日でも入れます。小さい子がいる場所が苦手な息子でも、誰もいない広い森は楽しそう。
そこにたまたま園長先生が話しかけてきてくださいました。
わたしは悩みに悩んでいたので、初対面の園長先生に思わず誰にも相談できない胸の内を吐露。
すると園長先生は全部話を聞いてくれ、「お母さん、ほんとうに頑張っているわね。子どものこともすごくよく見て、一生懸命考えているのね」と温かくほほ笑みました。
園長先生は「年少さんで入園してくる子のなかに、毎年数人は、窓の外をずっと眺めて『おうちに帰りたい』と泣く子がいるのよ。それを見ると、わたしがたまらなくなっちゃってね。お母さんが預けると決めたら私たちは責任もって預かるけど、もう少しお母さんと一緒でもいいのかなと思うこともあるのよ」と話してくれました。
そして「焦らなくても大丈夫よ、お母さん。子どもはお母さんが大好きで一緒にいたいんだから、もう1年一緒にいてもいいじゃない」と背中を押してくれたのです。
いくつもの幼稚園を回ったなかで、「焦らなくて大丈夫」と言ってくれたのはここの幼稚園だけ。
わたしはいままでひとりで悩んできたことが、やっとほぐれて、思わずその場で号泣。そしてやっと、幼稚園は1年見送ろうと決意できました。