成人しても家を出ず、住み慣れた部屋から出ることを拒むのがいわゆる「こどおば・こどおじ」と呼ばれる状態の人たち。
本人はそれでいいとしても、まともに働かないような家族がいると困るのが親やきょうだいです。
自営業のように自分たちの力でお金を稼ぎ続ける必要のある世界では、「こどおば・こどおじ」の存在は苦労が増していく一方。
ある一家はどんな大変さを抱えているのか、実際のケースをご紹介します。
「うちは自営業でお金がある」と信じ込む長女
今回お話を聞いたのは、厨房に立つ飲食業を営んでおり、長男も経営に携わっていると話す女性。
女性の娘・ルナさん(仮名)は現在41歳で、若いころは専門学校で経理の勉強をしていたそうです。卒業後に就職した商社に馴染めず、1年ほどで退職してからは、実家を出ずに自分の部屋で過ごしています。
たまにアルバイトや派遣社員として働くものの正社員の雇用を目指して就職活動をしたことはない、とルナさんの母親は振り返りました。
「合わなかったらすぐに辞めてしまうから」「自分のスキルじゃ雇ってくれる会社なんてないから」がルナさんの言い訳ですが、そのなかには「うちは自営業でお金があるから」という言葉もあります。
お金があると思い込むのは、日々の売上などでまとまった金額を目にする機会があるからかもしれません。
ですが、実際は支払うものも多く「裕福とは決して言えない」のが母親の実感で、それを言ってもルナさんは「生活できているじゃない」と耳を貸さないそうです。
「外での労働が厳しいなら家業の手伝いを」と会計処理などを任せても、難しい帳簿の管理にすぐ音を上げて逃げ出してしまい、結局は自分の部屋でだらだら過ごしている状態が続いているといいます。
そうなると家を出てもらうのが両親の希望だそうで、「結婚相手でもできれば生活についてもっと真剣に考えるだろう」と思っていたそうですが、恋人ができる気配もありませんでした。
「甲斐性のある男性なら結婚したい」
「外に出なければ出会いもなく、最後に彼氏がいた話を聞いたのはもう10年以上前になる」と思い出す母親は、お見合いも考えたそうです。
そこで結婚についてどう考えているのか聞くと、ルナさんは「甲斐性のある男性ならしたい」と話しており、「そんな人と出会えないのならいまの状態でも自分は構わない」と両親に告げたそうです。
本人はそれでいいかもしれないけれど、大変なのはルナさんの生活費まで稼がないといけない両親。
「せめて自分が使うお金くらいは自力で何とかしろ」と父親はお小遣いを渡すのを拒んだこともありました。
それが不満だったルナさんは「どうせ私なんか生きていても仕方ないんだ」と何日も部屋に閉じこもり、最終的に父親が折れて毎月のお小遣いを渡す約束をしたそうです。
そんな出来事もあって、ルナさんは余計に実家にしがみつくのかと感じました。
このままでいいと焦ることなくいられるのは、両親の力があってこそ。
母親は「親孝行を考えるなら家を出てくれるのが一番だけど」とため息をつきますが、ルナさんは「一人暮しなんてできるわけない」「都会のように条件のいい人が多いわけじゃないし、ここは田舎だから結婚なんかできわけないのよ」と自論を持っていました。
どこまでも相手しだいであり、「下手に焦って家を出て苦労するのはイヤ」と、両親から「家を出てほしい」と言われるたびに抵抗しているそうです。
そんなルナさんの言い分は、いつまでも実家のスネをかじる自分を正当化したいからだと、両親は考えています。