夫のモラルハラスメントがひどく、これ以上結婚生活を続けられないと思ったときは、離婚することも立派な選択肢のひとつです。
「配偶者に非がある証明」が難しいと思われがちなモラハラですが、話し合いでの離婚成立が難しい場合でも、家庭裁判所の離婚調停制度を頼るなど手段はあります。
悔いなく離婚を成立させるには、行動を起こす前の準備が肝心。モラハラ夫と離婚したいと思ったとき、どんな準備を進めればいいかご紹介します。
「配偶者のモラルハラスメント」でも離婚は可能
たとえば、配偶者が別の異性と肉体関係を持ったり明らかな暴力を振るってきたりなど、誰が見てもアウトと思われる事象があるときは、被害を受けた側が離婚を進めるのは当然にあります。
モラハラの場合、受けている害が精神的なものであり第三者に証明できるものが少ないことが、離婚は難しいだろうと思う理由です。
民法が定める離婚事由には「婚姻を継続しがたい重大な事由」があり、モラハラはこれに当てはまります。
「こんなことをされる自分が悪いのだ」「自分さえ我慢すればいい」と耐えるのではなく、自分を正しく守るために取る手段が離婚。
夫のモラハラが理由で離婚することは可能であり、しっかりと準備をして切り出すのが正解です。
モラハラ夫と離婚したい場合の、離婚準備リストをご用意しました。
「モラハラ夫」との離婚は、こうやって進める!
1.モラハラの証拠を集める
夫のモラハラが離婚の理由だと第三者に理解してもらうためにも、証拠はできるだけ多いほうが吉。
- モラハラを受けたことを、日付を入れた日記で記録する
- モラハラが起こったときの様子を写真や録音で残す
- LINEなどのやり取りも証拠になる
- 精神の不調で病院にかかっている場合は、診断書を書いてもらう
- 警察など外部の機関を頼っているときは相談した日を記録する
モラハラの多くは、暴言などの言動に現れます。もし何かあったときは録音をする、写真を撮るなど記録しましょう。
日記は一方的に書いたことなら証拠にならないと思う人がいますが、実際の離婚調停や離婚裁判ではモラハラの過程として注目されることが少なくありません。
もちろん嘘を捏造することはダメで、かえって自分の印象が悪くなるので勧められませんが、どんなモラハラがあったかを詳細に記しておくことは、相手の攻撃を封じるためにも有効です。
何が証拠になるかわからず不安なときは、無料の弁護士相談などを使って相談してみるのもいいですね。
2.離婚後の生活についてシミュレーションしておく
離婚は、成立すればいいのではなくその後の生活で自立できてこそ成功と言えます。
離婚した後の住む家や仕事のこと、子どもがいる場合は学校のことなど、どんな暮らしになるかをしっかりと想像しましょう。
収入が少なく自立が難しいときは実家を頼る、市町村が提供しているひとり親世帯向けの住宅への入居を考えるなど、広い視野で選択肢を考えることが重要です。
子どもがいるひとり親世帯にはさまざまな制度が用意されており、申請が必要であったり申し込みに期日が設けられていたりすることもあるので、市役所で確実な情報を掴んでおくことも大切。
アパートなどを借りたい場合は、保証人をお願いする人が必要な場合を忘れず、両親などに離婚の意思を話しておきましょう。
離婚後の生活ではお金の有無がよりいっそう現実を左右するので、仕事についても改めて考える機会とも言えます。
正社員としての就職や転職も視野に入れ、地に足のついた暮らしができるように計画を立てましょう。
3.財産分与について把握しておく
離婚するときに避けられないのが財産分与であり、婚姻期間中に築いた財産は平等に分けることが民法で定められています。
財産のなかには預貯金のほかにも生命保険の返戻金や家にある家電なども含まれるため、「何が財産分与の対象になるのか」を正確に把握することが最初です。
できれば弁護士への無料相談などを利用して、リストを作ることをおすすめします。
離婚準備で気をつけたいのは、銀行の通帳や印鑑を確保するための動きを配偶者に知られる危険で、離婚の意思があると見抜かれると相手が財産隠しに走るケースは多々あります。
証券や貴金属の保管場所などは夫がいない間に探り、勝手に持ち出すのではなく写真を撮って財産の証拠とします。
モラハラでの離婚は慰謝料が発生する場合もあり、どれだけの被害を受けていたかも財産分与に影響する可能性があるため、証拠を残すこととセットで頭に入れておきましょう。
4.いきなりの離婚が難しい場合は、別居や離婚調停も視野にいれる
モラハラ夫との離婚で最大の難関は、相手が離婚を拒否することです。
モラハラをする人間は自分が悪いという自覚が薄く、「言わせるほうが悪い」など言動を正当化するため、離婚を切り出したことでいっそうに強い圧力をかけてくることが多々あります。
まともな話し合いができないと想像がつくときは、協議での決着は諦め先に別居するのも手。そのためにも、離婚後の住居の確保は最優先で決めておきましょう。
別居は、長くなればそれをもって夫婦関係が破綻していると裁判所に判断される材料になり、婚姻期間によって年数は変わります。
また、家庭裁判所には誰もが申し立てを行える「離婚調停」という制度があり、ふたりの調停委員が別々に話を聞いて離婚の成立を目指す道もあります。
モラハラ夫との離婚には時間がかかるケースが多いため、長期戦を見据えた計画を立てることが肝心です。
5.子どもがいる場合は親権の確保を考えること
子どもがいる場合は、どちらが親権を持つかが問題になります。
モラハラ夫が、離婚は受け入れるけれどが子は引き取ると親権を主張してきたら、これも家庭裁判所での離婚調停で話し合うのがベストです。
離婚後も引き続き自分が親権を持つのが妥当だと主張するのであれば、親としてのモラハラ夫の様子や、自分の育児への関わりを明確に示すものを用意しましょう。
親権の確保で離婚調停を利用することは、こちらが親権を持てば相手は養育費を払う義務から逃れられず、万が一払わない場合は給与の差し押さえなども可能なことがメリットです。
また、離婚後も子どもが父親と会う面会交流についても、調停委員や裁判官を交えて具体的な取り決めができるため安心。
一方で、どちらが親権を持つかには子どもの意思を尊重することも大切で、どちらと一緒に暮らしたいかを確認することを忘れてはいけません。
離婚後は子どもたちとの暮らしになるのであれば、学校のことや今後の父親との関わりなども、きちんと説明するのが親の義務と考えます。
モラハラ夫との離婚準備は、ひとりで悩まないことが大切
配偶者がモラハラをしない夫であっても、離婚は人生の一大事であり、切り出すことから大きな勇気が必要になります。
だからこそ離婚の意思を告げる前に自分の環境を整えておく準備が不可欠であり、悟られないように進めていくのは大変です。
法律に則って行うのが離婚なら、知らなかったことで思わぬ損をしたり、逆に不要な情報を得てしまい混乱したりなど、気持ちを維持するのが難しいという人は多く見聞きします。
離婚準備では、悩みや苦しみをひとりで抱え込まないことが、心を折らずに進めていくコツです。
外部の施設や市町村では悩みの相談を引き受ける窓口があり、弁護士の無料相談なども開催されています。
精神的にきつくなってきたときはそんな手段を頼り、「心のガス抜き」もしっかりと意識しましょう。
離婚を決めた自分を責めず、正しく生きるための選択なのだと胸を張るためにも、離婚の準備から間違いなく進めていきたいですね。
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