顔の半分が見えなくなってしまうマスク。コミュニケーションにおいてはなかなか厄介な存在です。この内容を書き始めてから、「マスク越しのコミュニケーションについて」という講演のお問い合わせも増え、関心の高さを改めて感じております。
そこできょうは、マスク越しのコミュニケーションのポイント「言葉遣い」と「声の出しかた・話しかた」についてをご紹介します。
マスク越しのコミュニケーションポイント1.言葉遣い
言葉遣いというと、「てにをは」の使いかたや敬語の使いかたなどを思い浮かべるかたが多いのですが、マスク越しのコミュニケーションにおいては、それらよりさらに大事なポイントがあります。
それは「明るい言葉を選ぶこと」です。言葉は、文字だと考えれば「記号」であり、無機質なものではあります。でもそれは「想いを伝えるツール」であると考えれば、そこには心が介在する以上、「温度」があり、「重さ」があり、「明暗」があります。
- 温かい言葉をかける
- 冷たい言葉を浴びせる
- 重い言葉となって響く
- 軽い言葉となって通り過ぎる
- 明るい言葉に救われる
- 暗い言葉に引きずられる
少しあげるだけでも、日常的にこういういいかたはされていますよね。「生きた言葉」といういいかたがあるように、言葉は単なる記号ではなく、生き物なのです。マスクはその生き物に、1枚布をかけるようなものです。
もぞもぞ動いているのはわかるけれど、それが何なのかがはっきりわからない。そのうえで、暗い言葉を選んだらどうでしょう。ただでさえくぐもっている状態で、さらに暗さを感じさせたら、その言葉は「不安」「恐怖」「心配」「警戒」といった、暗い感情をいつも以上に速いスピードで生み出してしまいます。
マスク越しに聴く否定語は、否定を越えて拒絶となって相手に届きます。単なる「ダメ」が「ぜったいにダメ」といったように強化されるのです。明るい言葉を選ぶとは、否定的な言葉・後ろ向きな言葉を、肯定的な言葉・前向きな言葉に変えるということです。
「ダメ」なことをいうより、「いい」ことをいう。「できない」ことをいうより、「できる」ことをいう。「ダメ出し」するより、「OK出し」する。顔が見えないぶん、言葉の温度と明るさをあげましょう。見えないところを補うイメージで、意識的にこれまで以上に言葉選びに慎重になりましょう。
マスクはいい印象を減らし、悪い印象を高める?
先日、とあるスーパーで、陳列商品に手を伸ばした子どもに、マスクをした店員さんが「触らないで!」と注意しました。子どもはびっくりした表情をしたあと、店員さんの顔を見て火がついたように泣き出しました。
店員さんは慌ててあやしながら、「ちょっと注意しただけなんだよ」といっていましたが、マスクによるブロックによって、子どもにとってはちょっとした注意ではなく、厳しい叱責と感じられたのでしょう。
マスクはどうしてもその性質上、いい印象を減らし、悪い印象を高めてしまうところがあります。だからこそ、意識できるところはしっかり意識することをこれまで以上に求められているといえますね。