お金を運んでくる透明人間
Gさん自身は、仕事も家庭生活も普通にうまくいっていると思っていたそうですが、Gさんが管理職になってから、突如として仕事も家庭もグチャクチャになります。
仕事面では部下から「パワハラ」だと内部告発されたり、部下がどんどん退職したり、異動願いを出されたりする…。家庭では誰もGさんを見向きもしないどころか、妻と子どもが結託してGさんを除け者にする…。そんな感じで四方八方ボロボロの状況だったそうです。
しかしGさん自身は、なぜこんなことになっているのか皆目検討がつかない状態でした。
実はGさんの心のなかには、幼いころから両親にされてきた「Gさんの意思を無視した過度な期待・要求」への強烈な怒り、恨みつらみ、悲しみがあり、そうしたフラストレーションを無意識に職場の部下に対してぶつけていたのです。
部下に対して非情なまでに過度な期待要求を出し、結果が出るまで延々と仕事をさせる。期待に応えず結果が出せないと、問答無用で容赦なく評価や異動による制裁を加える…。
そうやって部下の頑張りを無視し、結果しか見てくれないGさんから、部下はどんどん離反していきます。
Gさんは「仕事なのですから、結果がすべてなのは当然だと思っていたのです」とのこと。
一方家庭では、Gさんが両親にされたように過度な重荷を背負わせることはしていませんでした。むしろ、ほとんど家庭のことを顧みず、子どものことにもまるで関心を向けていませんでした。
子どもが、何が好きで、どんな部活に入っていて、どんな友だちと遊んでいて、学力はどの程度なのかなどを、Gさんはまったく答えられませんでした。
家庭のことを顧みないGさんの妻は、いつのころからか子どもと結託してGさんをまるで透明人間かのように扱い出します。
料理も作る。
洗濯や掃除などの家事はしっかりしている。
Gさん抜きだと家族に笑い声もある。
でも誰ひとりとして、Gさんと家族らしい会話する人はおらず、Gさんは「私は家族にとって、毎月、お金を運んでくれる透明人間のようなものなのです」とおっしゃっていました。