カウンセリング×心理療法の、問題解決型カウンセラー・前田泰章です。メルマガでは、人間関係の改善、日常生活や仕事に役立つ情報を、実体験を通して語っています。
最近、カウンセリングで「母が嫌い」というお悩みが増えています。特に女性のクライエントさんに多いのですが、「母以外の人間関係は問題ないのに母のことになると関係がうまくいかない」というケースです。
そこできょうは、「母が嫌い」というかたに向けて書きました。心の葛藤を緩和するきっかけにしていただければ幸いです。
表面的には、公私ともに順調な私
あるクライアントさん(女性)は、同僚から「○○さんはいいわね。いつも明るくて元気で悩みがなさそうで」と言われるほど、周囲からは何の悩みもないように見られていました。
仕事もプライベートも表面的にはうまくいっていましたが、学生のころからなんとも言えない「虚しさ」「疎外感」に襲われることがあったそうです。この感覚は、どこからきているのでしょうか。
この女性は、母との関係に問題があるせいでこの感覚を感じているということに薄々気がついていました。しかし、誰にも話せませんでした。「元気で明るい自分」というイメージを壊したくなかったのです。
ほかの人間関係は問題がないのに、母と話しているとささいなことで暴言を発してしまい、ときには怒りが抑えられなくなり、暴力的になってしまうこともありました。
このままでは母を傷つけてしまうのではないのか…そんな不安からカウンセリングを受けることになったそうです。
私はどうして母が嫌いなんだろう
この女性は、幼少期に母からされたことがトラウマ(心の傷)となっていたのです。それは、自分だけ「除け者扱い」にされ続けたことでした。
あるとき、目が覚めるとひとりぼっちでした。「お母さん、○○(妹)」…呼んでも返事がない。二人はどこに行ってしまったのか、不安でとても心細かったといいます。
しばらくして、母と妹が帰ってきました。2人は食事に行っていたのです。
なぜ起こしてくれなかったのか母に問いただしましたが、「だって、○○ちゃんは寝てたから」「○○ちゃんは一人でも大丈夫でしょ、お姉ちゃんなんだし」との回答。このような場面が何度もあったのです。
私だけ誘われない。私だけ除け者扱い。私は本当にこの家族の人間なのか?母に嫌われているのでは?そう思うようになったといいます。
大人になってからも、そのように感じることは続きます。たまに帰省しても母は妹のことばかりを話し、目の前にいる自分のことは何も聞いてくれませんでした。
やがて母の顔を見るのも嫌になり、何か言われるたびに、何とも言えない激しい怒りがこみあげてきて、暴力的になることもありました。
母とは縁を切るべきか、しかしこの先結婚して子どもができたら、母に頼らなければならない。せめて、母との関係を普通にしたい。というのがその女性の求めていることでした。
この女性の母親がなぜこのような態度をとり続けていたのかはわかりません。もしかしたら、母親自身が精神的な病を患っていたのかもしれませんし、深刻な悩みを抱えていたのかもしれません。
しかし子どもからしたら「母」という「無償の愛」の象徴でもある、絶対的な存在に除け者扱いされるというのは、絶望的だったと思います。そのような母からの仕打ちは、大人になってからも何かしらの「生きづらさ」を感じることが多いものです。
その生きづらさの背後にある要因のひとつとなっているのが、アダルトチルドレン(AC)です。僕は12年間カウンセラーをさせていただいていますが、「生きづらい悩み」を突き詰めていくと、親との関係に何かしらの問題が潜んでいました。
虐待、ネグレクト、無関心、兄弟間の比較、ヒステリー、過干渉、夫婦間の不仲、親の依存症など。そして、そのような親に育てられた子どもは、アダルトチルドレン(AC)である可能性が高いということでした。
アダルトチルドレンは病名や診断名ではなく、自己認知するもの。なので、たとえ母親が娘のアダルトチルドレンを否定したとしても、娘本人がアダルトチルドレンだと思えばアダルトチルドレンなのです。
そもそも「アダルトチルドレン」って何?
そもそもアダルトチルドレンって何?というかたもいるでしょう。アダルトチルドレンとは「いつもいい子で大人のように振る舞うことを強要され、子どもらしさを出せなかった子ども」のことです。
本来は、1980年代にアメリカで生まれた言葉。「機能不全家族(子どもが安心して育つ環境が整っていない家庭)」のなかで子ども時代を過ごして「生き辛さ」を抱えて大人になり、順調な社会生活を送れずに悩み苦しんでいる人のことをさします。
日本の「機能不全家族」は少し違い、多くの場合、仕事熱心な父親や良妻賢母の母親、優等生の子どもから成り立っていることが多いです。
こちらの記事では、「もしかしたらアダルトチルドレンかも…」というかたのために、チェックリストをご用意しました。普段の生活で当てはまる項目をチェックしてみてくださいね。
- チャックリストはこちら
- 生き辛いだけじゃない?見落としがちな「アダルトチルドレン」チェックリスト
by themでは、アダルトチルドレンを克服するためのワークなどもご紹介しています。いまお悩みのかたは、ぜひ参考にしてみてください。
- image by:Unsplash
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。