親を無理に許さなくてもいい理由
とはいえ、僕自身、この仕事を始めたばかりのころは、「親を許すこと」「怒りや恨みを癒やし手放すこと」が、毒親に植えつけられたトラウマからクライアントを解放し、自立に向かうために、もっとも重要なテーマだと思っていました。そのため、癒すことや親の立場になって考えてみることなどに時間を使っていた時期があります。
しかし、多くのクライアントから学んだことは、「もう親のことは許しました」「もう整理がつきました」とたとえ言葉で語ることができていたとしても、心の深い部分には、マグマを抱えたままで、これまでと同じように自罰的な思考、行動を繰り返してしまうというケースが少なくないということです。
そうすると、ふとしたことで奈落の底に落ちてしまいみじめさを感じる…。ふとしたことで、マグマが爆発して自暴自棄になってしまう…。そんなことが起こります。
実際、「もう許せた」と感じたときには、とても心が軽くなり、自分が大きなったように感じることがありますが、その状態がこの先ずっと続くかといえばそうとは限りません。すると、「許しが足りないせいだ」「癒しが足りないせいだ」などと、いつまでも引きずっている自分にダメ出しを始めてしまう…。
そういう意味でも、繰り返しになりますが、許せないものは許せないままでいいし、無理して癒し手放さなくてもいいのです。
「許そう」と自然に思うまで、待ってもいい
そもそも、許すとか癒すという感情は、そう感じなければいけないから感じるものではありません。もちろん、誰かに強要されるものでもありません。感情とは自然と湧き上がってくるものですからね。
自然とそう思えていないにもかかわらず、無理して許そうと試みたり、癒やそうと試みたりすること自体、ともすると建設的に前向きに自立しようとする心を阻害してしまうことになると、僕は考えています。
そうはいっても、許さないままフツフツと怒りを抱えているというのも、それはそれで苦しいことは重々承知しています。
「許さない」ということは、「毒親に執着する」ことになるので、ずっと過去に生き続けることになります。それはやっぱり辛いですよね…。
では「許す」ことをどのように考えていけばいいのでしょうか?