アイドルを「商品」として消費すること
メディアが映し出すステレオタイプなジェンダー像の一つとして、アイドルがあげられます。
テレビ番組や雑誌など、さまざまな媒体でアイドルを目にすることはありますよね。ご当地アイドルや地下アイドルなどさまざまなアイドルがいますが、共通のイメージとして「若い」「異性のファンが多い」「女らしい・男らしいスタイル」というイメージをもつ人は少なくないのではないでしょうか?
異性のファンが多いということは、つまり異性が理想とする(期待する)女性像・男性像に近いとも受け取ることができ、過度に女性らしさ・男性らしさを演出する点が議論されてきました。
アイドルを演じる個々の「自分らしさ」は消え去り、世間の期待するアイドル像にすり合わせていくことが重要視されているのです。決してリアルとはいえない擬似的な女性像・男性像であり、それらを映し出すのはメディアです。
たとえば、日本で大人気の少年雑誌の表紙は、女性アイドルやグラビアなど、女性の肌が露出した性的なビジュアルから男性の目を引くようにつくられています。
そして、生身の人間らしい部分は切り取られ、人形のような非現実的な像が当たり前のように受諾されています。
読者との関係性だけでなく、アイドルと異性ファンの立場からも、男女の「見る」「見られる」のジェンダー像は浮き彫りになっています。
そして、アイドルの一つのイメージでもある「幼い女性性」を性的に消費することに対し、違和感を抱く当事者がいることも事実です。
もちろん、見られるなかでも主体性をもつアイドルや、世間のアイドル像に憧れてアイドルになる人もいて、一概にもよし悪しで判断することは難しい話題でもあります。
ただし、無意識的に異性が行ってきた「見る」という行為が社会的なジェンダー構造であり、それにより被害を受けている人がいることも知っておくべきです。
そしてその「見る」という行為を、アイドル以外の人にも当てはめることは適切でないと認識することが大切です。
情報を判断することでジェンダー格差に気づく
メディアから発信された情報を、そのまま受け取るのではなく見極めること、いわゆる「メディアリテラシー」を養うことは、メディア文化が生んだジェンダー格差に関する違和感に気づくきっかけにもなります。
メディアリテラシーと聞くと、横文字でなんだか専門的な領域だと思う人もいるかもしれませんが、意外とすぐに実践できることもあります。
その一つとして、情報に立ち止まることがあげられます。
普段、何気なく目にしたり耳にしたりする情報には、実は隠された差別やバイアスがかかっている可能性があります。
料理をする女性の姿、パートナーを紹介するときに使う「ご主人」という言葉、スーツを着て電車に乗る男性のイラストなど、さまざまな場面で固定的な性役割に基づく表現に出会うかもしれません。
「これが違う性別の人だったらどうだろうか」「性表現が含まれるこの言葉は本当に適切だろうか」と、一度立ち止まって考えてみてください。
また、一つの記事を友人や周りと共有して意見を述べ合うことも有効でしょう。
「性別としてではなく個人として」とは言いつつも、無意識のうちに性別によるフィルターがかかっている可能性があります。
そういった既存の考えを取り払うためにも、メディアが発信するさまざまな情報と向き合い、一緒に考えていくことが大事なのです。
- image by:Unsplash
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。