恵比寿の鉄板焼きよりサイゼが勝ることがある。その理由は?
「思いやりの証明って言われても、そんなデートをできる収入なんてないし、自信もスキルもないよ!」という男性に、私が過去アルバイト先で出会った男性A・Bの初デート例を挙げてみるとしよう。
A:11時に恵比寿ガーデンプレイスに集合。ディナーの予定があるためバルコニー席のあるカフェで軽くランチ。その後、14時ごろから代官山に移動しショッピング。ここで、人気ショップで売っていた定番アイテムをプレゼントする。最後に18時に予約したウェスティンホテル東京の鉄板焼きの店でお酒を飲みながら、肉や野菜に舌鼓を打つ。20時過ぎに恵比寿で解散。
B:14時に彼女の最寄駅から離れていない繁華街の駅前に集合。タワレコへ行き彼女が好きだと言っていたアーティストの曲を教えてもらい、自分の好きなアーティストも紹介し、試し聞きをする。
移動し、カフェで休憩しながら彼女の好きなアーティストのライブをYouTubeで視聴。その後、ファストファッション店でそのライブで着ていた衣装に似せたコーディネートを組むなどショッピングを楽しむ。
近くのサイゼリヤでお酒を飲みながら周りを気にせず大いに語り合い、帰り道は彼女の家まで送る。マンションの下から手を振り家に着いたのを確認し、22時ごろデートを終える。
AとBの男性、どちらが最終的に彼女と長く付き合うだろうか。
Aの初デートプランを考えた男性はきっと「初デート 定番 女性が喜ぶ」などで検索したか、何度もこのデートプランに女性を連れていっているであろう。
初デートにさまざまな準備をしてきた女性に対して、価格の側面やSNS映え的側面から見れば最高点を叩き出せる、まさに思いやりの証明ができた初デートプランだ。
それに対してBの男性の初デートプランは高級なプレゼントもレストランもない。最後にはサイゼリヤで食事だ。けれど何よりも相手の女性のことを考え、知ろうとし、喜ばせようとする思いやりの証明ができている。
14時という少し遅い時間に集合することで彼女にゆったり準備する時間を与え、移動時間を少なくして疲れさせず、彼女が心から楽しいと思えるように細部まで気遣いをしている。
Aのプランが悪いわけではない。しかし私だったら、Bの男性とお付き合いをするだろう。なぜなら互いになに一つ無理をしていないし、私としかできないデートだからだ。この思いやりの証明をされれば、次のデートが楽しみになり、デートで撮った写真を何度も見返し、これから先の人生を共にしたいと思う。
Aの男性は、私ではないどこかに用意された「女性像」に向けた初デートプランを使用している。無理をしていたなら上げてしまったハードルを超え続けることはできずいつか互いに疲れ果ててしまうし、あまりにも手慣れていたらほかの女性の影がチラついてしまうかもしれない。そうなると、付き合ったとしても長い月日は重ねられないだろうと想像できる。
高級な食事はInstagramに載せて一時の自己顕示欲を満たすためのものとなり味は忘れ、買って貰ったプレゼントはいつか生活の一部となり色褪せるか、最悪メルカリ行きになるだろう。
数年後「初デートはサイゼだった」と話す彼女の隣にいるのは…
結局、初デートにおける女性に対する最大級の思いやりの証明は、プランや場所ではない。
もし、Bの男性が待ち合わせた直後、上辺のトークスキルで彼女を笑わせてサイゼリヤのおいしすぎるメニューの食し方を熱弁し伝えただけでは、Aの男性に完敗したかもしれない。
けれど、Bの男性はサイゼリヤに行き着く前に彼女を最大限に喜ばせようとしている。その時間を経て辿り着いたのがサイゼリヤという場所だったとしても、女性は彼と一緒にいたい気持ちであふれていて、ディナーの場所なんて気にならない。同じサイゼリヤでもやっていることが全く違うのだ。
どうしても最大級の思いやりの「証明」という言葉で表すと、中身の密度に関わらず目に見えるものでそれを証明しようとしてしまうのが男性の性質なのかもしれない。
けれど女性というものは、目に見えるそれらしいものよりも目に見えない密度の濃い本質的なものを、行動という目に見えるもので表してほしいと思っている。
「初デートはサイゼリヤだったんだよね」
何年後かに、彼女が誰かにこのセリフを話したとき。いまの彼との馴れ初めである意外なエピソードとなるか、過去にあった最悪なデートの一例となるかには、収入もスキルも関係ない。彼女への思いやりを全力で伝えられる行動だけなのだ。
結論としては、初デートにサイゼリヤはアリだろう。しかし、それに至るまでの過程をしっかり検討したうえでなら、だ。
「行き慣れているから」「安くておいしいから」はあくまで主観でしかない。初デートはお互いを知るための場であり、さらにアプローチするための場でもある。
だとすれば、デート相手に寄り添い、理解しようと努めること…つまりは「思いやり」に重点を置いたほうがいい。その結果がサイゼリヤならなにも問題はないはずだ。
今回はあくまで男性が初デートプランを組む前提だったが、これは女性主導の初デートだろうが、互いに案を出しあう初デートだろうが、変わりはない。
上野駅のホルモン焼き。これが、私の人生最高の初デート。ロマンチックのかけらもない場所でも、彼の最大級の思いやりの証明のおかげで私の人生のなかでいちばん楽しかったデートになった。そんなデートができたならきっと、どんな初デートも素敵な思い出になる。
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