大人になってからも子ども部屋で暮らし続けている女性を指す、「こどおば」というネットスラング。
親に甘えて暮らしているというイメージが強いですが、そうではない人もたくさんいます。そのため、「こどおばと呼んでほしくない!」と思う人も多いです。
今回は「こどおばと呼ばないでほしい…」と話す、食品関連会社で事務員をしているというマミさん(35歳)にインタビューしてきました。
マミさんは現在、70歳になる両親と実家で同居しています。兄と姉はともに結婚して子どもも生まれ、実家から遠く離れた県外で生活しているそう。
自分が「こどおば」と言われるケースに当てはまると知ったのはつい最近のこと。それまでは、この暮らしに何の疑問も抱いていなかったと言います。そして「こどおばと呼ばないでほしい」と、常に感じているようです。
マミさんが「こどおば」になった理由とは?
―まずは、マミさんが実家暮らしを続けている理由を教えてください。
「はい。理由は大きく分けて2つあります。1つ目は給料が低いからです。大手企業で働いているわけではないので、給料は全然上がらず…。たぶん同世代と比べても10万円以上月収が少ないです。その少ない給料で高い家賃を払って一人暮らしをするのって、すごく効率が悪いですよね。だったら実家でお金を貯めて、将来に備えた方が堅実的だと思いました。
とはいえ親に甘えっきりなわけじゃないですよ。家事も母と分担して行っていますし、生活費だっていれています。母にはむしろ『生活が楽になった』って感謝してもらっているくらいです」
―たしかに収入面を考えると、実家暮らしのほうが将来にも備えられて効率的ですよね。2つ目の理由も教えてください。
「はい。2つ目は、親の介護です。兄も姉もすでに家庭を持ち家を出ているため、両親を傍で見守れるのは私しかいません。父は昨年脳梗塞を患い麻痺が残ってしまいました。母がサポートすると言っても、高齢なので厳しいことが多いでしょう。
また両親は実家を離れたくないと言ってますから、兄姉が面倒を見るとなれば、転職や子どもの転校などさまざまな変化が起きてしまいます。だったら、独身で、結婚する予定もない私が面倒を見るのってすごく自然な流れだと思ったんです」
―マミさんがご両親を傍で見守ることができているからこそ、お兄さんやお姉さんも安心できていそうですね。
「兄も姉も長期休みのときは実家に帰ってきて、2日ほど滞在するのですが、そのたびに『いつもありがとう』と感謝してくれます。
また兄の奥さんが非常にいい方で、こまめに電話もくれるんです。看護師さんなので、気になることがあればよく相談させてもらってます。たまに『本当は私たちが同居するのが正しいんだけど、甘えちゃって本当にごめんね、ありがとう』と言われることも。
でも全然気にしていません。私はいまの暮らしに、何の不満も抱いていないので。むしろ親に長く親孝行できるんだと思えば、幸せなことだと感じています。だからもう、安心して任せてほしい」
―そんなマミさんでも、子ども部屋おばさんと呼ばれてしまうんですね。
「一度同窓会で再会した友人に、実家で両親と暮らしてるって言ったら『こどおばじゃん』って笑われました。そのときはじめて『こどおば』というワードを知ったのですが、そのときは腹が立ちましたね…。
子ども部屋で親に甘えながら暮らしているわけじゃない、しっかり理由があってこの暮らしを選んでいるのに、どうしてそんな言葉でまとめられなくちゃいけないの?って思いました。こどおばだなんて、呼ばないでほしい」
「親の介護が必要だから、実家からは出ていきたくない」
―もしも経済的な余裕があったら、実家から出たいとは思いますか?
「そうですね…思うかもしれませんが、両親を傍で見ていたいので思わないかも。経済的な理由だけだったら出ていきますが、親の介護が必要な以上、いまは出ていきたいと思えません」
―実家暮らしをしていることに対して、ご両親はどのように話していますか?
「父が脳梗塞を患う前は、『あなたもいい加減実家出たら?』と言われることはありました。ただ心底迷惑だからという感じではなく、収入が増えたら一人暮らしも検討すれば?みたいな感じでしたね。出てけと言われることはありませんでしたし、家事も積極的にやっていたので…。
ただ父が倒れて以降は一切言われなくなりました。いまはたまに『結婚して出ていくことになったら、いよいよ老人ホームを考えないとね』と言うほど。母は免許がなく、父は倒れてから免許を返納したため、現在運転できるのは私のみ。買い物も私の運転でいくので、やっぱり私が出ていったら困ることが増えるからでしょう」
―マミさんが出ていくことで、ご両親の生活は不便さを増してしまうかもしれないんですね。
「だからといって、出ていかずにずっと実家にいろと強制されているわけでもありません。いい人が見つかれば応援するし、結婚したらちゃんとその人と暮らすんだよと、そのとき私たちのことは気にしないでねとしっかり言われています。
両親を理由に自分の人生を狭めるんじゃないということは、兄姉からもずっと言われていることです。子どもに頼らなくても生きていける備えはしっかりあるから、心配するんじゃないよと。だから、両親が不便になるのがかわいそうだから出ていかない、というわけでもありません」