こんにちは。よりよいコミュニケーションについてセミナー・講師をしている山本衣奈子です。
きょうは、「相手にどう思われるか、と考えると何も発言できない」というお悩みについてお話します。
自分が思い描く相手は、あくまで想像上の人物
「相手のことを考えて行動しましょう」「相手の迷惑にならないように気遣いの心を持ちましょう」多くの人が昔から、そんなことを言われ、そして思ってきたのではないでしょうか。
私もそう教わってきましたし、実際それが大事だと思うシーンはたくさんあったし、その言葉に嘘はないと感じています。
ただ、ここには1つ大事な落とし穴があります。それは、そもそも“相手”のことなど分かりようがないということです
相手のことを考えることはもちろんできますが、それはあくまでも“自分”の頭の中にいる“相手”であって、“相手”そのものではありません。
もう少し言えば、自分が考えて思い描く相手は、あくまでも想像上の人物だということです。相手のことが分かるのはその相手自身だけです。
いやもしかしたら、こちらがときに自分のことを分からなくなっているように、相手自身も自分のことはあまりよく分かっていないのかもしれませんね。
いくら考えても分かりようがないものに対して「考えて行動する」というのは随分とハードルの高いことですよね。
考えたところで正解が分からない以上、考えれば考えるほど悩みは深くなる一方です。自分が発することに対して、相手がどう思うかを考えても仕方ありません。
物事の捉え方というのは、例えば、疲れているとかストレスが溜まっているとか、そういう心身の状態でも変わってくるわけですから、相手の疲労度まで考慮したりすればそれこそキリがありません。
ですから、相手に振り回されすぎずに、言いたいことは、まずちゃんと言っていいんです。
言いたいことを我慢してモヤモヤと嫌な気持ちになるより、分からないながらもちゃんと言葉にして伝えれば、それが会話を生み出し、気持ちが良くなりスッキリします。
ただし、だからといって「相手のことなど考えなくてもいい」ということではありませんので誤解のないように。
人として最低限のマナーとモラルを忘れたら、言葉は凶器になります。
人にペンを渡すときは、尖ったペン先を自分に向けて渡すように、相手に渡すときは相手を傷つけないように心配りをする、それだけはしっかり大事にした上で、自分の想いは我慢せずにしっかりきちんと伝えていきましょう!
上手に相手に伝える話し方
「綺麗な声で」「滑舌良く」「噛まずに」「聞きやすく」
もちろんそれは素敵なことです。話し方が綺麗な方は本当に魅力的だし、聞いていて心地よさを感じます。けれども、それが必ずしも“正解”というわけではないのではないでしょうか。
例えば方言。地域によっては、かなりアクセントが違っていたり、言葉の響きが強く、喧嘩腰に聞こえるようなところもあります。
でも、だからといって、決して方言に間違いなんかないですよね。そこには方言ならではの温かみや個性があり、その地方を表現する魅力があります。
話し方に大切なのは、「正しく」できるかどうかより、あなたらしく「伝える」ことができるかです。仮に滑舌に難があっても、アナウンサーのように美しくは話せなくても、だからこそ届けられる“あなたの言葉”があるはずです。
それに、自分が思うほどその人の話し方は悪くないことがほとんどですし、通常のコミュニケーションにおいては、相手は「会話」を求めているのであって、そんなに上手さを求めているわけではないものです。
話し方が上手くなることを目指すより、自分の言葉で届けられるようになることを目指した方が、相手との関係性はずっと温かく気持ちの良いものになりますよ!
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