成人すれば、親元を離れ社会人として独立した生活を送るのが一般的な大人の在り方ですが、30代や40代になっても実家から出ず、子ども時代に過ごした部屋で暮らすのがいわゆる「こどおじ(子ども部屋おじさん)」「こどおば(子ども部屋おばさん)」です。
仕事もせず親の収入に頼るなどの特徴がありますが、世間知らずのまま年齢だけ重ねるので人間性が成長せず、幼稚な自己愛で周囲を振り回します。
きょうは「子ども部屋おばさん」がどんな在り方をしているのか、実例をご紹介します。
「取り残される自分」への焦り。選ばれないのは誰のせい?
マユミさん(仮名)は37歳、独身のままずっと実家で暮らしており、「両親から結婚を急かされるのがつらい」と話します。
「私だって彼氏はほしいし結婚もしたいけど、出会いがないんですよ。マッチングアプリも使ってみたけど、私が実家暮らしでアルバイトって聞いただけで逃げていく男が多くて。結婚できないのは私のせいじゃないです」
マユミさんの両親は多くの土地を持ついわゆる資産家で、マユミさんは働かなくても生活ができることから、大学を卒業しても子ども部屋を出ず暮らしています。
そんな自分について「恵まれている」と自覚があり、お小遣いは言えばもらえるし、たまに行く短期のアルバイトは「親が、無職じゃまずいと言うから」と尻を叩かれてやっている状態でした。
最後に彼氏がいたのは10年前。親が勧めるお見合いで知り合った男性でしたが、「自立していない女性は無理」と言われて3カ月で破局したそうです。
それからは友人などを頼って出会いを探していましたが、まともな仕事を経験していないことや実家頼りの生活を理由に男性たちは離れていき、友人もみんな結婚していって、マユミさんだけが独身のまま取り残されました。
「実家暮らしでアルバイト」というのが世間から見たマユミさんの事実で、そのことに自分は違和感を覚えなくても周りはそうではなく、男性から相手にされない現実を見るたびに、マユミさんは焦りが強くなっていったそうです。
「私よりお金のない友達が、普通に結婚したりするんですよね。私みたいにアルバイトしかしてないって言っていた近所の人も、公務員の男と出会って結婚していきました。親に『早く結婚しろ』って言われても、私は選ばれないのだから仕方ないじゃないですか」
幸せになっていく周囲を恨む気持ちは、強い口調に滲んでいました。
マユミさんは、親が結婚を急かすのは「世間体のせいだ」と考えています。
不動産会社を経営する両親が、一人娘の結婚について悩んでいると近所の人に漏らしていることは知っていました。
幼いころから「◯◯さん宅のお嬢さん」として近くの人たちから大切にされてきた記憶のあるマユミさんは、だからこそ40代間近になっても独身のまま家にいる自分が親は嫌なのだろうなと思っていました。
そうやって自分をチヤホヤしていたところの娘さんが、結婚して家を出るような話を聞くと、マユミさんは猛烈に怒りが湧くそうです。
「どうやってその男と出会ったのだろうと思って話を聞いたら、会社とか合コンとかで。仕事しないと生活できない家は大変だなと思うけど、出会いはあるんですよね。何でその人は選ばれて私はこのままなのって、イライラすると近くのものに手が出ちゃうんです」
怒りから眠れずに夜中起き出し、まくらを殴ったり目覚まし時計を壁に投げたりするのが、マユミさんのストレス発散法。
両親が慌てて止めに来るらしく、そのときに「近所迷惑だから」と言われて余計に腹が立って、ドアを蹴ったこともあるそうです。
「私のことより近所の人がどう思うかを気にする親が許せないです。結婚しろなんて無理なことを言うくせに、私はストレスを発散することもできないんですか?」
ふてくされたようにそう言うマユミさんは、自分が社会に出て働く、外の世界で出会いをつかみにいくことは考えていませんでした。
それは経験がないことで、いまのままで何とか男性に選ばれることを想像していますが、いままで叶ってこなかったことが、これからも叶う可能性はあるのでしょうか。
現実を変えたいのであれば、自分が変化を求めない限り事態は進みません。
子どものころから過ごす部屋で大人になったいまも暴れても、その自分を何とかしてくれる人はいません。
何かに八つ当たりをしても、自分が変わらないなら現実も等しくそのままなのですね。
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