こんにちは、精神科医・心理研究家のゆうきゆうです。発行しているメルマガでは、人間心理を裸にして、あやつる技術をお教えしています。
今回も、女医と青年の会話で「認知症の人にもっともやってはいけないこと」についてお届けします。
認知症の人にもっともやってはいけないこと
女医:あなたは、認知症の人にもっともやってはいけないことは何か知ってる?実は、いいことに思えるけどやっちゃいけないことがあるの。
青年:えっ、何ですか?
女医:認知症の人の行動を、何でもやってあげてしまうことよ。
青年:何でもやってあげてしまうこと?それって、親切で、いいことじゃないですか?
女医:そう。それが多くの人が陥りがちな勘違い。実際、いいことのように思えるわよね?
青年:は、はい…。逆に放置する方が悪いことだと思っています。
女医:そうね。でもそれが逆なの。たくさんやってあげるほど、認知症はどんどん進んでいくのよ。
青年:なぜ!?
手伝うほど、認知症は悪化する
女医:実は認知症というのは、すべての能力が完全に失われるわけではない。できないことのほかにも、できることもたくさんあるの。
青年:へぇ…。
女医:また発症の進み具合も人によってさまざまで、全部ができなくなるという人は、そうそういないわ。みんな、不得意なこともあれば、得意なこともあるの。
青年:知りませんでした!
女医:特に若いころから慣れ親しんだことがあれば、長期的にその行動は得意なままに残るわ。たとえば仕事に関連したこととか、やりなれたこととかね。
青年:へぇ…!
女医:ここで実際、ある人に認知症の症状が出てくると、ついつい家族はそれを手伝いたくなる。
青年:はい…。
女医:そのこと自体は悪いことではない。手伝ってもらうことで、認知症の人も生活しやくなるからね。
青年:そうでしょうね。
女医:でもそのまま、家族が認知症の人の行動の大半をやってしまうことがある。たとえば食事も洗濯も予定管理も、ありとあらゆる行動をね。
青年:ダメなんですか?
女医:一見いいことのように思えるでしょう?でもそれを繰り返していくと、どんどん症状が悪化していく。
青年:なぜ?
女医:たとえるなら、ある人の運動をすべて手伝って、本人は一切、体を動かさなくて済むようにしたら、どうなる?
青年:それは…どんどん筋肉が衰えていくと思います…。
女医:その通り。その結果、まったく体を動かせなくなっていくでしょうね。
青年:たしかに…。
女医:これは脳も同じなの。よかれと思って大半の行為を手伝ってしまうと、本人は何かをする機会がどんどん減ってしまう。その結果、能力が衰えてしまうの。すると認知症も悪化一直線よ。
青年:そ、それは怖い。本人にとってよいと思ってやっていても、それが悪い結果になってしまうのですね…。
女医:その通り!