相手にも、やらせること
青年:じゃあ、どうすればいいんですか?
女医:本人が本当に困っていそうなことは、手伝ってあげる。でも、そうではない行動は、よっぽどのことにならないかぎり、見守ってやらせてあげるのが大切よ。
青年:なるほど、見守ってあげるんですね。
女医:そう。または逆に、相手のできそうな作業を見つけて「これ、頼んでいい?」などお願いするのも手。たとえ家族が余裕でできることであっても、相手にやらせてあげること。
青年:リハビリみたいなものですか?
女医:そうね。あえて作業させることで、本人の能力を保つわけ。さらにそれができたら、「すごい!助かる!ありがとう!」など、積極的にほめてあげること。
青年:ほめる…!
女医:そう。すると、その相手は、どんどん気持ちも活性化していく。人間にとって、「他人のために何かをできた」というのは、何よりの幸せになるからね。
青年:ははぁ…。そういう意味でも、行動させた方がいいわけですね…!
どんな関係でも使おう
女医:さらにこれは、認知症の人だけに限らない。
青年:認知症の人だけでなく、ほかの人にも使えるということですか…?
女医:その通り。家族でも友達でも恋人でも、相手の気持ちを活性化するために重要な法則でもあるの。すなわち相手の行動すべてをやってあげようとしないこと。家事全般をやってあげる、できるかぎり大半のことをやってあげる、またはたくさんたくさん、尽くしてあげる…。このように相手のためにと思って行動してあげてばかりいると、相手はどんどん能力が衰えてしまう。
女医:さらに相手はやってもらいっぱなしの状態に居心地の悪さを抱えて、その気持ちを解消するために自分はやってもらって当然だと思ってくるものなの。
青年:それはイヤですね…。
女医:その結果、何をしても感謝してくれなくなる。さらに尽くしている人のことを、どんどんしたに見てしまうリスクもありえるわ。
青年:ひ、ひどい…!
女医:よって重要なことは、全部をやってあげたり、尽くしすぎているのをやめること。そしてかわりに、認知症の人と同じく、相手にも何かをやらせることよ。
青年:何かをやらせる?
女医:たとえば「今回はここのお金を出すから、次はあなたが払って」「これはやっておくから、こっちの作業は頼んでいい?」などね。そして相手がやってくれたら、感謝をたくさんしてあげること。相手は認知症の人と同様、嬉しくなって、気持ちも活性化してくるわ。
青年:なるほど。やってあげっぱなしはダメなんですね!
女医:その通りよ。どうか覚えておいてね。