こんにちは、椎名です。僕は身体の性が女性で心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと生活をともにしています。
結婚式やウエディングフォトの準備は、多くのカップルが大なり小なりの衝突やモヤモヤを経験する、ケーキ入刀よりもずっと困難な“はじめての共同作業”。
2023年秋、かねてから生活をともにしてきた身体の性が同性である彼女と、パートナーシップ宣誓制度を申請。せっかくだからと記念撮影をすることになった際、僕と彼女も例にもれず準備期間中に衝突してしまいました。
今回はそのときに改めて感じたことをお話します。これから結婚式やフォトウエディング、僕たちのようにパートナーシップ制度申請記念の撮影などを控えている人に読んでいただけたら嬉しいです。
結婚式の準備に「いざこざ」はつきもの
結婚式や披露宴を行うには、準備しなきゃいけないことが山のようにあります。
招待客の範囲や規模式自体の規模感、おもてなしの内容。結婚式の代わりに親族だけの食事会やフォトウエディングをする場合でも、結婚式や披露宴ほどではないにしろ判断することや準備はつきものです。
準備をするにあたって、パートナーと連携や共有が思うようにいかず不満が溜まってしまった…という声をパートナーを持つ周囲の知人友人からもよく耳にしてきました。
準備に伴ういざこざは、結婚式などを行ううえでのいわゆる「あるある」です。しかし揉めた当人にとっては「あるある」で済ませられない場合も多いですよね。
僕も2023年秋にパートナーシップ制度を利用した際に予定した記念写真の準備期間中、彼女に不満を抱え揉めてしまった「あるあるで済ませられなかった」側の人間です。
募る不満
僕と彼女は2016年の秋に、生涯をともにすることを誓いウエディングフォトを撮影しました。
当時住んでいた自治体で、パートナーシップ制度は未導入。もちろん日本で同性婚をすることも叶わないため、本当に写真だけのものでした。
「結婚式を挙げられない分、結婚式風にしたい」と思い、彼女がウエディングドレスを、僕はタキシードを着てチャペルで撮影しました。
一度ドレスとタキシードで撮影しているので、今回のパートナーシップ宣誓の記念撮影では、そのときよりももっとラフな写真を撮ろうとふたりで話をしていました。
ひと言にラフな写真と言っても、規模やテイストはさまざま。
カメラマンに依頼する?依頼するならカップルフォト専門のサービス?フォトスタジオ?それともカメラを趣味にしている僕の友人?頼まないなら流行りのセルフ写真館?
服装も白系など淡い色合いやでウエディング風のコーディネートで合わせるほか、お揃いでTシャツにデニムなどのカジュアルなコーディネートにしたり、普段のデートに着ているようなナチュラルなコーディネートの場合も。
撮影場所もスタジオから公園や街中、自然のなかでの撮影など、昨今のカップルフォトや結婚式の前撮り事情は、参考にするスタイルのバリエーションがとても豊富なのです。
セルフ写真館を利用する場合でも、プリクラではないのだから服装や小物くらいは用意したいもの。
カメラマンを依頼するのならばプロでも僕の友人たちの誰かでも、直前の依頼は避けたい。せっかくの記念撮影なのだから、時間に余裕をもって依頼も準備もしたいというのが僕の希望でした。
しかし彼女はそうではありませんでした。僕があれこれ参考になるカップルフォトを探して「依頼する方向性だけでも早め早めに決めていきたい」と言っても、なかなか行動に移してくれなかったのです。
折を見ては収集したカップルフォトを一緒に眺めてイメージの共有を図りましたが、「そんなにちゃんと撮らなきゃだめ?」とあまり乗り気ではない様子。
しかし記念撮影をしたくないのかと言えば、「記念に写真は残したいと思ってる」と返ってきます。
全く撮りたくないのならまだしも、そういうわけではないと言われると余計にモヤモヤと彼女への不満が膨らんでいきました。
僕が不満を募らせたのには、理由と原因があります。先にお話しした、2016年のフォトウエディングを行うための準備でのことです。
チャペルで撮影をするために、式場選びや式場との調整、ドレスとタキシードの試着やアクセサリー選び、今回の倍以上の小物の調達…今回の撮影に比べかなりの判断と準備が必要でした。
僕たちはお互いどちらからも明確なプロポーズをしておらず、僕からフォトウエディングをしたいと彼女に告げたことがプロポーズの代わりになっていました。
当時の僕は撮りたいと自分から言ってしまった手前、彼女をリードしなければと考えて自分からなんでも動いて準備を進めていました。すると、自然に判断や作業の比重は僕へと偏ります。
当時は、まだ20代半ばを過ぎたころ。ふたりで撮影するのだから、本当は何事も一緒に考えて決めたい気持ちと、悔いのないように自分のやりやすいスピードで準備を進めたい気持ちの間で揺れながらも、若さと勢いでこなしてしまいました。
今回も僕に偏ったことで当時を思い出し、「またか!」と思ってしまったのです。
前回から7年。30代半ばに差し掛かったいま、20代のように勢いで乗り越えるのは正直嫌でした。
彼女のために弁解しておくと、フォトウエディングをした当時、彼女は撮影後に僕が準備などを進めてきたことを心から感謝し、言葉でそれを伝えてくれています。
なので、当時僕に比重が偏ったことは一度納得していること。それに対してまたか、なんて考えてしまう僕自身が大変大人げないのです。
それを重々承知のうえで、「今度は一緒に考えて決めていきたい」と希望を伝えることにしました。