半年って長いようで短いですね。4月からスタートした『虎に翼』、9月末には終わってしまうと思うと、少し寂しい気持ちになってきました。
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- 【虎に翼/7月】頑張れば、どこかにひずみが出る。「母とキャリア」の現実を思い知らされた1カ月
そして、今月もいろいろと考えさせられるトピックが盛りだくさんでした。
特に注目すべきは寅子と星の結婚にまつわるあれこれ。
新潟で再開した星航一と恋仲になり、いよいよ結婚の話が出始めました。そこで、結婚や恋愛にまつわる問題があちこちであがります。
まずは、弟・直昭の結婚。直明は結婚後、「妻も一緒に実家で同居したい」と言います。
けれども、義理の姉・花江は大反対。自らの経験から、同居はやめたほうがいいというのです。ですが、直明は譲りません。
しばらく膠着状態が続いた後、家族会議の場に航一と直明の婚約者も同席し、本音を話す会に。
お互いを思いあってのいざこざだったことがわかったところで、寅子は「お試しに同居してみたら?」と提案。このときは、わたしまで一緒に目からウロコでした。
同居する・しないなどの問題は、そのときに決めなければいけないと思い込んでしまいがち。
だけれども「ダメだったらやめればいいじゃない?」という軽いノリでもいいじゃない、そうだそうだと思いなおしました。
なんでもそうですが、やってみなければわからないことってありますよね。嫌々だったけれど実は意外とメリットがあることもあれば、夢に満ちあふれて始めたことが「こんなはずじゃなかった」ということも。
「試しにやってみる」を人生の決断でも取り入れることで少しラクになる気がします。
子どもは持たない。結婚する必要、ある?
そしてさらに寅子と航一の結婚について。寅子は、子どもも持たないのにあえて「結婚」する必要があるのかどうかに「はて?」となり、悶々とします。
その悩みを打ち明けに、明律大学時代の同期・轟の事務所を訪れた寅子。そこで轟のパートナー・遠藤を紹介されます。遠藤は男性。そう、ここで同性愛についても語られます。
寅子には嘘をつきたくなかったと正直に話してくれた轟ですが、寅子は複雑な表情をしてしまいます。
しかもそこで「結婚する意味がわからない」と相談する寅子。
ですが、結婚は異性間でしか認められていません。それはいまもそうです。
そんな、結婚したくてもできない2人に向かって「結婚する意味が見いだせない」という悩みを伝えてしまったことも含めて寅子は大後悔します。
結婚なんて法律上認められていないどころか、世の中にカミングアウトすることさえ憚られる関係の2人からしたら、結婚できるだけでもうらやましいと思っちゃいますよね。
それでも、轟はそんなことで怒ったりしません。失言をした、もっといろんな人の話を聞きたいと謝る寅子に、仲間を呼んで話し合いの場を設ける轟。本当に懐が広いんだなと感動しました。
星との結婚を悩む寅子は、星に思いを吐露。すると星は「永遠を誓わない結婚」を提案します。
結婚は両者の合意により成立し、そして両者の合意によって離婚することもできる。だから永遠を誓わなくてもいいじゃないか、という提案です。
そういわれてみれば、結婚するときって「永遠の愛を誓う」ことを強要されている気になりますよね。
いやもちろんそのつもりで結婚するんですが、人間なんて気持ちが変わることもあります。そして法律上は、結婚するときに永遠の愛を誓わなくてもいいのです。
キリスト教式の教会で牧師さんに「あなたは愛を誓いますか」なんて言われちゃうものだから、なんとなく「永遠の愛を誓った」気になっていましたが、状況が変われば「離婚」を選択することも自由というわけです(もちろん離婚にもめごとはつきもので、すんなりいくことは多くないと思いますが…)。
「姓が変わる」に疑問
こうしてやっと寅子は「結婚」に前向きになったのですが、そのあとさらに寅子を「はて?」と悩ませる問題にぶち当たります。それは「姓が変わる」こと。
いまでも「夫婦別姓」に関しては議論されており、いまのところ日本では夫婦別姓は認められていません。
ビジネスネームとして旧姓を名乗ることはあっても、基本的には「どちらかに統一」なのです。
寅子はもともと「猪爪」でしたが、最初の結婚で「佐田」になりました。
そのときには何の抵抗もなかったのに、いまになって疑問に思えてきてしまった寅子。
遡ってみれば当時は「独身女性だと信用されない」ということが理由で結婚したので、逆に「姓が変わる」ほうが都合がよかったんですよね。
わたし自身、結婚時に「姓が変わる」ことは抵抗がありませんでした。ていうか、姓って自分から変えることがないので、変わることにワクワクしたりして。
恋愛結婚の場合は「好きな人の姓に変わる」って、割と気分よく感じる人も少なくないのでは?と思うのですが、元をたどれば家長制の名残りなので、納得いかない人がいるのもわかります。
1回目の結婚のときには疑問に思わなかった寅子ですが、今回は「佐田寅子」としてやってきた自分が消えてなくなってしまうのではないかと思えてしまった寅子。
あれこれ考えて、ビジネスネームとして佐田を名乗る案もひねり出しましたが、裁判官がビジネスネームを使うのは当時はNG。
寅子はひときわこだわりが強いような気がしますが…うーん、そう言われれば、夫の姓を名乗り始めて20年近くなるわたしですが、結婚前の友達からはいまだに旧姓で呼ばれますし、あのころの自分といまの自分はモードが違うのかなぁと思うときもありますし、自分の姓を消したくないというのもわからなくもないです。
そんな悶々とした寅子を見かねた航一は、「佐田姓を名乗ります」と言い出します。
ですが、これはこれで星家が大反対。特に後妻の百合さんが「お父さんに顔向けできない」と激怒します。
寅子は寅子で「自分の姓を消したくないだけで、こちらの姓になってほしいわけじゃない」とか言い出すし。なかなか難しいですね。
仕方なく佐田姓を捨てようと諦めかけた寅子に、航一が提案したのは「結婚のようなものをしましょう」ということ。
お互いに遺言書を書いて、それをもって結婚したことにしましょう、と。いわゆる「事実婚」です。
昭和30年代での事実婚はかなり珍しかったでしょう。ちなみに日本はいまでも事実婚では「内縁関係」どまり、配偶者控除とか家族と同等の扱いは受けられないんですよね。
そんな寅子と航一が最終的に選んだ「事実婚」ですが、直昭の計らいにより、寅子の明律大学時代の仲間をこっそり呼んで、サプライズ結婚祝いを行います。
法服を着たかつての仲間たちから「法律に認めてもらわなくても、わたしたちが証人となって結婚を認めます」と太鼓判を押された寅子と航一の結婚式は、何よりも最高の結婚式ですよね。
その幸せなシーンを見ながら、じんわり心が温かくなりました。
法的に認められることも必要かもしれないけれど、やはり周りに祝福されるというのが一番うれしいことなんだよなぁとしみじみ。
寅子の結婚を機に、地方から駆け付けた仲間たちを見て、まっすぐで不器用でおせっかいな寅子が、みんなに愛されていることを改めて感じて「寅ちゃん、よかったね!」とテレビの前でわたしも思わず拍手しちゃいました。
ああ、もうこの幸せのまま終わってほしい…と思いますが、いよいよこれから星家の面々と同居を始める寅子。
なんとなく不穏な空気は相変わらず。いったい何が起こるのか?もうもめごとなど起こりませんようにと祈りながら、また『虎に翼』楽しみたいと思います!
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